X社の責任を問えるようになることは海賊版対策にとって大きな前進だ。しかし忘れてはいけない。X社はただのCDN(コンテンツ配信ネットワーク)事業者であって、海賊版データを作成している張本人ではない。そのためX社が利用できなくなっても、海賊版業者は新たな方法を模索し続けるだろう。
多少ネットに詳しいと言うユーザーであれば、違法な海賊版サイトを一度も見たことがない、利用したことがないという人は少数ではないかとすら思われる昨今。
「私一人が海賊版を見るくらいならいいだろう」
こんな身勝手な理屈で、心無い一部のユーザーは海賊版サイトの存続を願い、利用を続けるつもりかもしれない。しかし、こうした負の選択が、自分自身の首を絞めることになるという帰結を皆が理解する必要がある。海賊版業者は、正規の著作権者から作品の権利を盗んでいる。その盗品で作品消費をすれば、当然、本来の創作者には何も還元されないばかりか、盗んだ人の利益に貢献することになる。
ちょっと漫画を読んだだけと思っているかもしれないが、その行為は犯罪の加担に等しいだけはない。クリエイターが受け取るべき報酬が盗まれているのだから、彼らが次に創作するための資本を奪ったことになる。もし、作品を生み出す人が潰れてしまえば、最終的にはコンテンツを楽しみたいと言うユーザーのもとに、新しい作品が届けられなくなるという現実をも招く。
これは本当に小さな一歩かもしれない。しかし、正直者が馬鹿を見る世界であってはならないという決意に司法がどう対応するのか。今後ともその行方に注目したい。