ボートレーサーの大山千広(23)にとって昨年は激動の年となった。8月には「プレミアムG1レディースチャンピオン」に初出場で優勝し、12月には賞金上位者が出場できるグランプリシリーズにも選出された。
年間獲得賞金は5600万円を超え、23歳の若さで賞金女王に輝きその名を轟かせた。しかし、大山の口を衝いて出る言葉は極めて冷静なものだった。
「自分に足りないものが何か、明確になった1年でした。昨年末のグランプリシリーズではトップ選手との力の差を肌で感じることができた。賞金女王になれたのもたまたま、運が良かっただけ。自分の実力とはまだ釣り合っていません」
愛らしいルックスも相まってメディアで取り上げられる機会が格段に増え、自分を見失いがちな環境に変わった。そんな中でも、ひと言ひと言考えながら言葉を絞り出す姿からは浮ついた様子はうかがえない。
「あまり熱くならないというか、周りに色々と言っていただいても、我を忘れて『わーっ』とならないところはあります。負けが多い仕事でもあるので、毎回熱くなるとキツくなります。これもいい勉強だなと、負けてもいい方向に考えを持っていくようにしています」
“賞金女王”も地元・福岡のレース場では若手の一人だ。レースを終え、水面から引き上げられた他の選手のボートを仲間と洗っていたかと思えば、機械の調整を行なう先輩に駆け寄り率先して手伝う。勝気な性格の選手が多い中、大山は自己主張が強いタイプではない。