勝負師とは思えない普段着姿の大山千広

「レースの前には今でもすごく緊張しますし、メンタルはめちゃくちゃ弱いです。強くならなければ大きなレースで勝てない競技なので、鍛えなきゃいけないという意識はあります。今は大きなレースで走るという経験を積み重ねることで補っていきたいですね」

 ただ、言葉の端々には現状に満足しない、強い闘争心も滲む。

「運もあって賞金女王になりましたが、ボートレースの魅力の一つは女子と男子が同じ舞台で競うこと。トップの男子選手と戦って勝ちたい思いは他の選手より強いかもしれません」

 憧れは、そんな舞台で31年間戦い続け、2018年に選手生活を終えた元ボートレーサーの母・博美さんの背中にある。

「男子選手にも負けない母は小さい頃の私にとって、とてもかっこいい存在でした。選手の心情を母は知っているからか、ここをこうしたらいい、とか、プレッシャーになるような話は家では一切しません。母が引退してからは、私が母にとって楽しみな存在になりたいと思うようになりました」

 ボートレースで最もグレードが高いSG競走で女性レーサーが勝利したことはない。加えて今年からは賞金女王の称号がのしかかるが、気負いはない。

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