2018年1月、杉並区のクリニックで40代女性が胸部X線検査を受けた際、検査画像には腫瘤の影が写っていたが、担当医師2人は「異常なし」と診断した。女性は受診から3か月後に呼吸困難などを訴え、同年6月に死亡した。
その後、クリニックが約9400人分の検査画像を再検証したところ、新たに70代の男性2人が肺がんと診断された。肺がんは治療が難しく、予後が悪いことで知られており、「X線画像の見逃しリスク」の深刻さを世間に印象づけた。
バリウムを飲んだ後、胃を撮影する胃部X線検査(バリウム検査)は“時代遅れ”と指摘されている。ナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師はこう指摘する。
「立体的な胃を様々な角度から撮影し、2次元の平面にモノクロで写し取って読影する検査ですが、胃の表面はデコボコで撮影の角度によって影が重なったり色の違いがわかりにくかったりするため、早期の小さながんを発見するのは困難です」
厚労省のがん検診の指針に含まれているため、今も広く実施されている検査だが、バリウム検査で胃がんが疑われる結果が出ても、二次検査として胃カメラで検査をやり直すことになってしまうのだ。
健康寿命に直結するこれらのがんでは、検査の選択を考えたい。
「胃がんと大腸がんでは、画像診断の精度が高く、細胞組織を直接採取して病理検査を行なえる『内視鏡検査』があります。また肺がんでは『低線量CT検査』を行なえば、X線検査で見つけられないがんを発見できます。X線による被ばくを避けられることもこれらの検査の利点です」(上医師)
新しい検査にも盲点があることを知っておきたいが、古い検査にはより大きいリスクがあるということだ。
※週刊ポスト2020年2月7日号