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恩師・野村克也さんの指導に反発し続けた門田博光氏の思い

 その2年目にそこそこの成績(打点王のタイトルを獲得)を残せたことで、3番ライトで使ってもらえるようになりました。野村さんは当初、ボクを2番バッターに育てたかったようで、1年目はブレイザー・ヘッドコーチからマンツーマンでバントの指導を受けましたが、それまでのボクの野球人生にバントなんてなかった。1週間が過ぎたところで、ブレイザーが「オーノー、ギブアップ」と叫んだんです。当時は英語がわからんかったが、どうやら降参したらしいというのはわかりました(苦笑)。

 その後、小細工のいらない3番で使ってもらえたわけですが、4番は野村さんですから、一発狙いではなく塁に出ることを最優先に考えるよう指導されました。野村さんから直々に「大振りをやめろ」と怒られたり、「ヒット狙いなら打率4割も狙えるぞ」と持ち上げられたりもしました。

 野村さんは自分以外の一流選手を通じた指導で、ボクに大振りをやめさせようとしたこともありましたね。巨人とのオープン戦の時に王(貞治)さんのところに連れて行かれて、「ヒットの延長がホームラン」というアドバイスを受けたし、オールスターの時は東映の大杉(勝男)さんから「オレは強振していない」と指導されました。

 それでもボクは「ホームランの打ち損ねがヒット」という考えを貫いた。考えを改めるどころか、逆に、野村さんと王さんから説得されたことで、この2人の通算本塁打の記録に割って入ってやろうと考えるようになったのです(門田氏の通算567本塁打は王氏、野村氏に次ぐ歴代3位)。

 そんな経緯があるので、とにかく野村さんには怒鳴られてばかりでした。阪急・山田久志のアンダースローから浮き上がってくる球をアッパースイングしていると、ネクストバッターズサークルから「上からかぶせんかい!」と野村さんの怒声が飛んできた。野村さんの野球理論に対して、素直に縦に首を振らなかったから、「3悪人」の一人に挙げられたのでしょうね。

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