もちろん、ボクも何も考えずに大振りしていたわけじゃありません。2年目に打点王を獲り、ホームランも31本打ちましたが、当時、1~2年目の選手にはピッチャーが真っすぐしか投げてこなかった。3年目からは、カーブやシュートを投げられて苦労しました。ヒットは打てたが、ホームランは激減(14本)。ある意味、野村さんの理論は正しかったわけです。それでも、体が小さいボクは振るしかなかった。
そのなかで、野村さんから学んだことはたくさんあります。ボクの打撃フォームは、野村さんを参考にしたものですから。南海には手本となる左バッターがいないと悩んでいた時に、凡打してベンチに戻って鏡を見たら、打席に左バッターが立っている。鏡に(右バッターの)野村さんの姿が映っていたんです。“これや!”と思って、それからは素振りをする野村さんを鏡越しに見て、密かに参考にして練習しましたね。多少、自分の体格に合うように調整はしましたが、野村さんはボクの最高の手本でした。