腹部に超音波を当て、表面を撫でるように動かす腹部エコー検査は、「沈黙の臓器」と称される肝臓の異変を発見する。肝臓がんの疑いがある場合、造影剤を用いて連続して画像を撮影する「ダイナミック造影腹部CT検査」などを経て確定診断し、治療方針を決定する。ときわ会常磐病院の尾崎章彦医師が指摘する。

「転移でできたものではない肝臓がんの94%を占める『肝細胞がん』では、腫瘤(がんのかたまり)の個数や大きさ、肝機能の数値によって適切な治療法が異なります」

 実は“確実に手術したほうがいい”と判断できるケースは限られている。

「腫瘤が3つ以下で肝機能が良く、術後も十分に肝臓が残せる場合には手術によってがんを取り切ることが最も根治の可能性が高いと考えられます。一方、肝機能が低下している状態で外科手術をすると肝臓が負担に耐えきれず、肝不全を起こしたり腹水が溜まってしまうリスクが高くなる。最悪の場合、死亡してしまうケースもあります」(尾崎医師)

 3個以下でも大きさが全て3cm以下なら、別の治療法があり得る。

「この条件だと、外科手術以外に『ラジオ波焼灼療法』も選択肢になります。体内に針を刺して先端に電流を流し、がんを焼く治療法で、外科手術より体への負担が少なくて済む」(尾崎医師)

 さらに、4つ以上がんがあって手術でもラジオ波焼灼療法でも治療が難しい場合には、「肝動脈から抗がん剤などを投与する『肝動脈化学塞栓療法』を行なうことが増えてくる」(尾崎医師)という。

 検査でがんが見つかっても手術が必要かどうかは、他の様々な条件を加味して判断されるのだ。それは他の部位のがんや、がん以外の重大疾患でも同様である。

※週刊ポスト2020年3月13日号

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