もちろん、演技派のジャニーズ・タレントといえば、風間ともユニットを組んでいた生田斗真の名前を挙げることもできるだろう。だが情報番組や教養番組で司会を務め、趣味は読書でオザケン(小沢健二)をこよなく愛するという風間の、いわゆる文化人のような趣きを考え合わせるならば、やはり異端である。
そんな風間の知性派ぶりが前面に出ていたのは、2013年から約3年間にわたって断続的に放送されていたNHK Eテレの『ニッポン戦後サブカルチャー史』だろう。同番組で“受講生”として出演していた彼について、“講師”を務めていた劇作家で演出家の宮沢章夫氏は次のように語る。
「打てば響くという、ありふれた言葉で語るのは申し訳ないが、風間君とEテレの『ニッポン戦後サブカルチャー史』で一緒に仕事をしていると、そんなふうについ口をついて出る。講義形式で番組の進行をする僕の話にすぐ反応してくれるし、見事な相槌を打ち、ときどき僕も考えていなかったような『そういうフォーマットがあるんですよね』などと返してくれる。そのクレバーさにはいつも驚かされた」
テレビの視聴者にとって、芸能人の内面は映像を通じて想像するしかないものの、たとえば『3年B組金八先生』で演じた兼末健次郎という人物のオモテの顔は、もしかしたら俳優・風間俊介と重なる部分があったのかもしれない。少なくとも、彼はどんなことにも好奇心を抱き、さらに「打てば響く」ような臨機応変さを持ち合わせていた。宮沢氏は続ける。
「まったくの視聴者として風間君がドラマに出ているのを見ると、役に合わせてクレバーに演じているのを感じ、それも俳優としてのすぐれた資質だろう。ただ、どこか破綻した風間君も見たい。ダメな人を演じる彼は、どんな人物に変身するだろうか」
役どころの要点を的確に把握する「クレバーな演技」は、やはり“兼末健次郎”の非の打ちどころのない優秀さと重なる。それは深い闇を抱えた役柄であったとしても、「クレバーな破綻」として見事に演じきってしまう実力だと言い換えることもできる。しかしそう考えるとたしかに、ジャニーズの異端児による、いわば身体をだらしなく用いた、クレバーではない「破綻」そのものの演技も観てみたい気がする。
●取材・文/細田成嗣(HEW)