正確に言うと、この二法で未成年学生を逮捕・投獄することはできない。この法律は未成年者を保護・救済するためのものだからである。罰せられるのは、未成年学生の飲酒・喫煙を見逃していた親権者、またその代行監督者である。先輩学生やゼミの教授を代行監督者と言えるかどうかは微妙なところだが、少なくとも参考人として取り調べはできるだろう。また未成年学生も、飲酒・喫煙の非行をしていることは間違いないのだから、補導の対象にはなるはずだ。そうだとすれば、説諭のため半日やそこらは警察署に留め置くことはできる。これで、全国学生総決起大会など総崩れではないか。
しかし、私の不安は杞憂に終わり、学生運動に未成年者飲酒・喫煙禁止法が適用されたことは一度もない。
考えてみると、そんなことをすれば企業などの新入社員歓迎会にも同じことをしなければならなくなるからである。中卒・高卒の新入社員や人事課長を全国でしょっぴいていたら、日本経済は麻痺してしまう。
とすると、今回の皇宮警察の処分は、どこに波及するか。興味津々ではある。
二〇一六年の十八歳選挙権制を機に民法でも二〇二二年から十八歳で成年とすることになった。しかし、なぜか飲酒・喫煙禁止法は二十歳以上を成年としている。
●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。近著に本連載をまとめた『日本衆愚社会』(小学館新書)。
※週刊ポスト2020年4月3日号