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ブッダは「人間の死」という怖ろしい現実にどう向き合ったか

ブッダの修行時代をうつした「釈迦苦行像」(時事通信フォト)

 人は、どうすれば死への恐怖を克服することができるのか──。作家で仏教研究家の平野純氏が、ブッダが自ら実践し、その弟子たちにも課した「墓場での瞑想修行」について解説する。

 * * *
 ブッダの教えは「世を捨て去る思想」だとよくいわれます。この言葉にはどこか消極的で、対決を避けるニュアンスがともなっています。

 ただ、ブッダには終生真正面から対決し、また人にも対決することを説いたものがあった。それが「人間の死」という現実でした。

 ブッダは物質的にめぐまれた少年時代をおくりました。そのなかで初めてみた死体に非常な衝撃をうけた。かれにとって、死はこのうえなく怖ろしいものだった。

 が、重要なのは、だからといってブッダは死から逃げなかったということです。それどころか、かれがあみだした死に起因するPTSD(心的外傷後ストレス障害)の克服法、それは徹底的に死と向き合うということでした。

 修行者たちは、林のなかの空き地に放置された死体が腐敗し、野生動物やウジ虫のエサになって朽ち果て、骨と化してゆく変貌のプロセスの一部始終を「ありのままに」観察し、瞑想の糧(かて)にする修行にうちこんだ。

 この修行を観察の「観」の字をとって「不浄観」といいます。そのねらいは「無常」(ものは一瞬とおかず絶えず変化してゆくこと、の意)を文字通り骨の髄まで会得するところにありました。

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