ジェイクは靴工場主の娘と結婚するが、戦争で片足が不自由になり、終戦後は妻の家財を売り払って、この湿地に辿り着き、ついには自分たちが「トラッシュ」と呼ばれる身になるのである。あるいは、最貧の白人カイアに手を差しのべる燃料店の黒人店主は、しかし村の心ない白人たちに「ニガー」と呼ばれ石を投げられる。
つねに弱者を踏みつける社会構造がある。湿地は不毛のイメージとは裏腹に、動植物の生命にあふれている。ラストで、深い木立の奥、ザリガニが鳴くところへ向ける眼差しをあなたはどう読むだろう?
※週刊ポスト2020年5月1日号