主人公・アユのスパルタ講師役を熱演。(c)テレビ朝日/AbemaTV,inc.
「ぶっ飛んだ役が得意な役者」としての地位を完全に確立した水野。あえて意地悪な見方をすれば、「正統派女優がイロモノに転向した」と捉えることもできるかもしれない。しかし、水野は2019年11月に出産・育児エッセイ『水野美紀の子育て奮闘記 余力ゼロで生きてます。』(朝日新聞出版刊)を出版し話題を呼ぶなど、女性からも熱い支持を集めているようだ。
女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)の著書があり、「めちゃくちゃドラマオタク」と自称するエッセイストで編集者の小林久乃氏は「水野美紀さんは個人的に大好きです」と熱弁する。
「何がいいかと言えば、自我を全面に出すことを恥じない姿勢です。清純派でデビューして、『踊る大捜査線』の雪乃役くらいまではそのイメージを保っていました。それが、事務所から独立された時期くらいから、体を鍛えているとか強さを打ち出すようになって、どんどん女性としての妙味を増していきました。物怖じしない発言、結婚・出産に加え、『奪い愛、冬』に見られるような思い切った怪演と、時間を重ねるごとに素敵になっていきます」
小林氏は、「現代の女性の多くは、周囲と同調することに悩んでいます」と指摘する。
「会社では面白くもないランチに付き合い、自宅に帰っても知り合いのSNSにいいね!を押す。そんな同調を全て捨てた瞬間、今までの時間がいかに無駄だったかと気づき、楽になることができるはず。水野さんは“同調女子”からいち早く脱皮し、自分のための生き方を見つけた先輩と言えるでしょう。彼女の迷いのない姿勢がこれからも支持されていくのだと思います」
型破りな役柄だけではなく、NHK連続テレビ小説『スカーレット』庵堂ちや子役でのコメディエンヌぶりも評価され、40代半ばにして役者として再ブレークを果たした水野。「今度は何をしてくれるんだろう?」とワクワクさせてくれる存在感は、“自分のための生き方”を模索する中での研鑽によって手に入れたもののようだ。
●取材・文/原田美紗(HEW)