何もしてない時間が子供には必要だという(写真/PIXTA)
西郷さんはこの時間を、突然プレゼントされた“自由な時間”と考えてほしいと語る。
「お子さんが、勉強以外に打ち込める好きなことを発見したら、大成功です。ゲームをやりすぎているんじゃないか、という心配もわかりますが、やりつくせばいずれ飽きます。子どもたちは、自分の不安をゲームで埋めているともいえる。そのことに気づいて、大人はただ見守ってあげていれば大丈夫。彼らには、親から何も言われずとも成長する力があります。
アメリカの児童文学作家のE・L・カニグズバーグは、『ベーグル・チームの作戦』の中で、《(成長の大部分は)ひとりでいる時に起こる》と書いています」
西郷さんが、実践してきた教育は、「子どもに不必要な干渉をせず、子どもを信じて、子ども自身に任せる」というものだった。
家で子どもと一緒にいる時間が長いからこそ干渉がすぎれば、子どもの、自分で考えて行動するという思考に悪影響を及ぼしかねない。「学校に行かない時間」とは、言い換えれば「子どもが自分の頭でものを考える時間」でもある。
尾木さんも言う。
「文科省や各自治体は、休校した分を、夏休みの削減や補習で対応しようとしています。でもこの考えは、非常にナンセンスです。なぜ“授業時数”を気にするのでしょうか。学校での学習は本来、“履修すれば終わり”ではありません。大事なのは“習得”することです。いまこそ日本は、履修主義から習得主義へと転換すべきではないでしょうか」
文科省は学習指導要領を約10年ぶりに改訂し(2020年度より小学校、2021年度より中学校で実施)、大きく「生きる力」の習得を打ち出している。
「新しい学習指導要領は教え方にも踏み込んでいるのですが、そこでうたわれているのが、アクティブ・ラーニングです。日本語でいうなら、“主体的・対話的で深い学び”です。たとえばすでにある中学校では、新型コロナウイルスについて調べることを課題として出し、その成果を学校のホームページで公開しています。これこそ主体的な探究型学習といえるでしょう。詰め込み型授業の時間を確保して帳尻を合わせるのではなく、休校のこの時間を、探究型学習へと振り向ければいいのです」(尾木さん)
そうはいっても、わが子にそれができるのか。言わなければ何もしないのではないか。そういった不安もあるだろう。だが、「言わなければ何もしない」のではなく、「言われ続けるから、言われるまで何もしない」子どもになる、と考えたらどうだろうか。
※女性セブン2020年5月21・28日号