コロナ禍での活躍で一躍有名になった台湾のオードリー・タンIT担当相(写真/AFLO)
周囲に理解されない悩みは多くのギフテッドが通る道だという。米シリコンバレーにある「ヌエーバスクール(以下、ヌエーバ)」は、そんなギフテッドを対象にした学校。そのヌエーバで15年にわたって日本語を教えてきた、ギフテッド教育の専門家・川崎由起子さんは次のように語る。
「ギフテッドの子供は賢さから、普通の学校で目立つことが多いんです。学校の課題の漢字ドリルをすべて終えて提出したら、先生から“先に進みすぎているから消しましょう”と返された子もいました。そうしたことで学校がつまらなくなり、不登校になるギフテッドもいます」
ヌエーバでは、社会から外れないように、“普通の人々”とどうつきあうかを教えるという。
「ギフテッドの子供たちは、自分が5分でできることを2日かかってもできない子がいると、不思議に感じます。しかしそれは、普通の子からしたら“嫌み”にも聞こえかねません。周囲とどのようにかかわるかを学ぶことが、彼らの生きやすさにつながり、才能を埋もれさせることなく生かすことにもなります」(川崎さん)
才能を持つ子供への理解を深めることも、彼らを守ることにつながるだろう。才能教育の第一人者で、関西大学教授の松村暢隆さんはこう話す。
「ADHDなど発達障害を持つ子供たちの中には、その一方で特定の分野で非常に優れた才能を持つ子も多くいます。そうした子供は『2E』と呼ばれますが、日本では“才能がある”という意味だけの『ギフテッド』と混同されがちです」
2Eの子供はその性質から、「才能を伸ばす才能教育」と「発達障害に応じる特別支援教育」が必要だという。しかし、日本では障害への支援ばかりが注目され、才能を伸ばすことは無視されやすい。「ギフテッド=障害がある子」と誤解する人も多い。そうした誤解から、親が子供の持っている才能に気づかないことも多いという。
「日本では発達障害の医学的基準はありますが、才能について公式の定義も基準もありません。公式の才能教育制度がないからです」(松村さん)
発達障害を持ち特別支援学級に通っていたが、実は優れた才能を持つ2Eだったと、後になってわかった例もある。
「障害の有無にかかわらず、いろんな才能を持つ子供たちが一緒に学ぶ『インクルーシブ教育』が導入されるなど、日本でも少しずつ変化がみられています。そうしたなかで、才能を持つ子が才能を発揮しやすくなるのではないかと期待しています」(松村さん)
※女性セブン2020年6月25日号