芸能

橘家文蔵 コロナ収束後にも活かされるオンライン配信

コロナ収束後の落語はどうなるか(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、コロナ禍以前はほぼ毎日ナマの高座に接していた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、オンライン配信の「文蔵組落語会」についてお届けする。

 * * *
 緊急事態宣言でリアルな落語会がすべて中止/延期となってから、橘家文蔵がオンライン配信の「文蔵組落語会」を始めた。文蔵後援会「三代目橘家文蔵組」の主催だが、チケット代を払えば誰でもストリーミング視聴券を購入できる仕組みだ。

 三遊亭兼好をゲストに迎えた4月9日の第1回は迂闊にも観逃してしまったが、4月14日の第2回は視聴券を購入。ゲストの春風亭一之輔は『あくび指南』を演じた。

 完全にふて腐れた態度で先生に接していた八五郎が夏のあくびに感動して「求めていたのはこれだ!」と手のひら返しで先生はドヤ顔に。いちいち「デーン!」と大声で勢いをつけないと台詞が出てこないというバカバカしい設定が一之輔の『あくび指南』のハイライト。「ごく自然に」と言われて「ごく自然に!」と叫び「スッと言いなさい」に「スッ!」と答える八五郎が愛おしい。

 文蔵は『転宅』。冒頭、旦那とお菊のやり取りを丁寧に描き、「そこまで見送らせて♪」と上目づかいで可愛く迫るお菊に「そ、そうかい?」と旦那がデレデレする図が楽しい。泥棒が飲み食いする場面が本当に美味しそうなのも文蔵ならでは。お菊の色仕掛けに引っかかる泥棒のマヌケさ加減もケタ違いだ。

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