昨年(2019年)のアカデミー賞作品賞を受賞した『グリーンブック』(ピーター・ファレリー監督)は、黒人クラシック・ピアニストを車に乗せて、イタリア系アメリカ人の運転手が1960年代のアメリカ南部を運転して回るロード・ムービー。2人は旅の途中で起こる様々なトラブルによって人種の壁を乗り越え、友情を育んでいくのだが、この作品についても「白人が善玉になっている」「白人が黒人の救世主のように描かれている」と批判が起こった。前出・高濱氏がいう。
「現在、ハリウッドは世論に極めて敏感になっている。『史実に反する』『差別的だ』と批判されうる作品の製作はより難しくなっていくでしょう。配信についても同様で、過去の名作の冒頭に『注意事項』を掲げる案も検討されているようです。
私の知人のアメリカ人高校教師は“『風と共に去りぬ』が問題視されるなら、他の名作も同じことになりかねない。マーク・トウェインの『トム・ソーヤーの冒険』など一連の作品は、黒人差別を痛烈に批判している。しかし『ステレオタイプに黒人が描かれている』と指摘されれば、それらを原作とした映画も十分ターゲットになり得る“と懸念していました」
『風と共に去りぬ』以外にも、すでに番組の放送・配信中止が起きている。パラマウント・ネットワークは人種差別的表現を問題視してリアリティ番組『COPS』の放送を取りやめた。まだまだ余波は広がりそうだ。