◆年齢制限で「奨励会」退会の厳しいルール

 奨励会に入ったからと言ってプロ入りが保証されたわけではない。むしろ、ここからが試練の連続だ。

 まず、厳しい年齢制限がある。奨励会入会者の大半は6級からスタート。月に2回の対局日があり、既定の成績を収めれば昇級、昇段できる。最初の試練は初段になれるかどうか。「満21歳の誕生日までに初段になれなかった場合は退会」という非情の掟があるのだ。

 ここをクリアして二段、三段と昇段していくと、待ち構えているのが「三段リーグ」。約30人の奨励会員(三段)が参加するリーグ戦で、半年間に18局を行う(年2回)。2020年度前期は、9月26日の最終局までの長丁場を31人の会員たちがアツい闘いを繰り広げている最中だ。

 この三段リーグで上位2人に入ると晴れて四段に昇段し、プロ棋士となれるわけだ。昨年度後期、初の女性プロ棋士誕生の期待がかかった西山朋佳女流三冠は14勝4敗の好成績で上位3人が並んだが、前期の順位の差で3位にとどまり、惜しくも四段昇段を逃し、大きな話題となった。

 約30人の三段リーグ参加者のうち、四段に昇段できるのは半年でわずか2人のみ。ここでも、「満26歳の誕生日を含むリーグ終了までに四段になれなかった場合は退会となる」という厳しいルールが存在する。せっかくあと一歩でプロというところまで来て涙を飲んだ会員は数多くいる。奨励会三段で退会後、将棋教室の講師やアマ大会で活躍している人たちも少なくない。ユーチューバーとして活躍している人もいる。

 中には、退会後に一念発起して、編入試験の資格を得てプロになった棋士も何人かいる。折田翔吾四段もその一人だ。

 奨励会を退会後にユーチューブに将棋実況動画の投稿を始め、アマ王将戦で準優勝し、銀河戦への出場権を得て、大会ではプロに連戦連勝で決勝トーナメントに進出。大会後もプロ棋士との対局に勝って直近の公式戦成績を10勝2敗として、棋士編入試験の資格を獲得し、プロ棋士と対局し、3勝1敗でプロ棋士編入を決めた。30歳でのプロ入りだった。

 奨励会入会時のハードルの高さ、入会後のレベルの高い対局、年齢制限、四段昇段枠の少なさ──。こうした厳しい環境からして「プロ棋士になるのは東大に入学するよりも難しい」と言われるゆえんだ。

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