ライフ

福岡柳川名物 伝統の鰻のせいろ蒸しが味わえる老舗

上鰻せいろ蒸し会席 4960円

 福岡県南部に位置する柳川市は、掘割が縦横に巡り、どんこ舟の川下り観光で知られる水郷の城下町。福岡市の中心・天神から電車で約50分、西鉄柳川駅で降りると、涼感を呼ぶ水と柳が出迎えてくれる。

川下りは約4キロのコースをどんこ舟で巡る

 柳川は、固有の魚介類が豊富な有明海の漁師町でもある。かつて鰻がよく獲れたことから、今も変わらず食べ継がれているのが、鰻のせいろ蒸しだ。一度蒸すと冷めにくいので、漁の合間などにも好んで食べられていたらしい。

 日吉神社に隣接する柳城児童公園内の水辺の散歩道には鰻の供養碑が立ち、毎年7月中旬には鰻の供養祭も行なわれている。この地でいかに鰻が愛され、大事にされているかがよくわかる。

 鰻料理店の老舗「若松屋」は安政年間の創業以来、掘割沿いに店を構える。蒲焼や素焼も出すが、人気が断然高いのはせいろ蒸しだという。使う鰻は、鹿児島県産と宮崎県産。まず、鰻は背開きにして、串打ちせず、炭火で焼いて蒲焼にする。ご飯はギリギリまで少ない水加減で固めに炊き、タレをしっかり混ぜ込む。このあと蒸すので、ご飯は固めでないと蒸し上がりの食感が悪くなるそうだ。これに蒲焼と錦糸卵をのせて数分蒸す。

「中子(なかご)」と呼ばれる器を積み重ねて一気に蒸す

上から「うみたけの粕漬け」「むつごろうの甘露煮」

若松屋は安政年間の創業

 朱色のふたを開けると、フワーッとなんとも美味しそうな湯気が立つ。箸を入れると、鰻もご飯もふっくら柔らかく、予想以上に熱々だ。ハフハフしながら頬張った鰻は、タレのやさしい甘味でしっかり美味しく、ご飯にまで鰻の豊かな風味が移っている。蒸しているからこそ味わえる蒲焼と米の一体感。これぞ、伝統の鰻のせいろ蒸しの醍醐味だ。

 鰻を堪能したら、店からすぐの「北原白秋記念館」へ。柳川生まれの詩人・白秋の足跡に触れ、詩情豊かな故郷への生涯にわたる思慕を知ることができる。

北原白秋記念館は復元した生家と資料館からなる

柳川藩主立花家の屋敷だった御花では、庭園や大広間などを見学できる

●若松屋 福岡県柳川市沖端町26
【営業時間】11時~20時(L.O.19時15分)【定休日】水・第3火(祝日の場合は営業)
上鰻せいろ蒸し会席 4960円。肝吸い、漬物、うざく、鰻巻が付く

◆撮影/松隈直樹、取材・文/牛島千絵美

※週刊ポスト2020年7月24日号

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン