米国によってニコラス・マドゥロ大統領が拘束された(時事通信フォト)
「え、そんなことありえない。もし本当だったらめちゃくちゃ嬉しいですけど……」──1月3日、記者からの連絡に20代のベネズエラ人男性はそう返答した。
この日、南米ベネズエラの首都カラカスで、米国によってニコラス・マドゥロ大統領が拘束された。しかし同国内では情報伝達にタイムラグがあったようだ。世界が衝撃を受けるなか、ベネズエラの地方都市に住むこの男性は自国に起きた大事件に気がついていなかった。【前後編の前編】
記者と言葉を交わしたおよそ2時間後、彼から「さっきの件、本当でした……」と改めてメッセージがあった。
「私はカラカスに住んでいないから、こんな衝撃的な事件が起きていることを知るのにも時間がかかってしまいました。なぜかというと、ここはあなたの国と違って、報道も検閲があるので“彼ら”に不利な情報を国民が入手することが難しいんです」
アメリカが「敵国」と名指し
今回の作戦はアメリカ軍の特殊部隊が主導した。深夜、低空飛行で侵入したヘリがマドゥロ氏の所在を急襲したという。ベネズエラ側は民間人を含む死傷者が出たと発表しており、国際社会からは主権侵害を懸念する声も上がっている。国の主権を無視したともいえる今回の作戦。なぜアメリカはこのような前代未聞の作戦を実施したのか。
「2020年、ベネズエラ国内の麻薬組織と結託してアメリカ国内でコカインを流通させた罪などについて、アメリカはマドゥロ大統領を起訴していました。今回、マドゥロ氏はブルックリンの拘置所に収容され、現地時間1月5日にはニューヨークの裁判所に初出廷しました。
また日本ではあまり報じられていませんが、マドゥロ政権は国民を非人道的に支配していたとみられています。トランプ氏としては、マドゥロ氏を出廷させることに加え、ベネズエラ国民を救うという大義も掲げたわけです」(大手紙国際部記者)
法廷に立ったマドゥロ大統領は、起訴された罪についてすべて否認。「私は無実だ。善良な人間で、今もわが国の大統領だ」と主張している。
しかし冒頭のベネズエラ人男性は「この国の経済は破綻しています。マドゥロになって、とてもひどくなった」と語るのだ。
