ライフ

感染経路特定の難しさ 「認定陽性者」制度を確立できないか

参加者全員の意向が一致するとは限らない(イメージカット:アフロ)

 会食でコロナ感染、誰にでも起こりうる事態である。そしてその場に居合わせないとなかなか想像しにくい問題もある。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏がレポートする。

 * * *
 東京都には過去最高の280名以上の新型コロナウイルスの陽性者数が報じられても、どことなく弛緩した空気が漂っている。一度はテレワークを導入したにも関わらず、「不公平感」や「役員の一声」を理由に「全員出社」に戻してしまった企業も多い。

 PCR検査数の分母が増えたことも、弛緩した空気になる理由のひとつだろう。加藤厚生労働大臣は4月29日の参議院予算委員会で「発熱4日以降というのは検査要件ではない」と言い放ち、各所から華々しく顰蹙(ひんしゅく)を飼った。だが本当にPCRは簡単に受けられるようになったのだろうか──。

 結論から言うと、確かに以前よりもPCR検査は受けやすくなった。だが、陽性者の取りこぼしは厳としてある。例えば以下のような事例だ。

 7月上旬、会社員のAさん(40代・女性)は出席した会食で新型コロナウイルスに感染した。その日は一列4名でテーブルを介しての対面で8名での会食だった。Aさんの左隣には「顔見知り程度」のX氏が座り、右隣にはX氏と共通の知人のB氏が座った。左からX氏、Aさん、Bさんという並び順である。

 会食中、X氏はAさん越しに旧知のBさんにマスクなしで話しかける。しかも声は大きめ。古き良き時代なら「元気があってよろしい」となったかもしれないが、New Normalではホメられた行動様式ではない。

 4日後(接触5日目)、AさんとBさんは38℃台の熱を発した。Aさんは「風邪は年に一度、ひくかひかないか。生まれてこの方、インフルエンザにかかったこともない」というほどの健康優良児にも関わらず、だ。

 Aさんの熱は翌日(接触6日目)には平熱に下がったものの、そこで「昨日Bさんにも熱が出た」という話を聞く。「もしや」と思い、翌朝(接触7日目)かかりつけのクリニックを受診してPCR検査の希望を伝えると、即、紹介状を発行してくれ、そのまま近所の検査スポットへ。ちょうど検査スポットが空いている時間帯だったこともあり、検査はサクッと完了。昼には会社に状況を伝えて、自宅の納戸で自己隔離に入った。

 Aさんのもとに病院から「陽性」の連絡が入ったのは検査の2日後(接触9日目)。その日のうちに保健所からも連絡が入り、その後の流れについて説明を受けたという。

「会食の参加者にも逐次状況は連絡していました。ところが、私とBさんが検査を受けた頃、実はX氏が接触2日目から数日間、発熱していたことが発覚。しかも本人はもう症状が治まっていることを理由に検査を受けるつもりもないと仰っしゃり、会食参加者からの『検査して』というお願いもことごとくスルーしてました」

 X氏、Aさん、Bさん以外の5名は無症状だったが「前後数日で、思い当たる会食はその日だけ」。しかも会食は、もっとも感染力が強いと言われる(X氏の)発症前日だった。可視化された事象からすると、X氏が感染経路となった可能性は高い。そこで無症状の会食参加者も「濃厚接触者に当たるはず」とPCR検査を受けようとしたが、そこには思わぬ障壁が立ちはだかった。

「それぞれ地域の保健所に問い合わせたところ、『濃厚接触者』の定義は陽性者の発症からさかのぼって2日以内に接触した人だというんです。接触2日目に発熱したというX氏はその定義に当てはまりますが、検査を受けてくれないから陽性者としてみなされないんです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

モデル・Nikiと山本由伸投手(Instagram/共同通信社)
「港区女子がいつの間にか…」Nikiが親密だった“別のタレント” ドジャース・山本由伸の隣に立つ「テラハ美女」の華麗なる元カレ遍歴
NEWSポストセブン
米大リーグ、ワールドシリーズ2連覇を達成したドジャースの優勝パレードに参加した大谷翔平と真美子さん(共同通信社)
《真美子さんが“旧型スマホ2台持ち”で参加》大谷翔平が見せた妻との“パレード密着スマイル”、「家族とのささやかな幸せ」を支える“確固たる庶民感覚”
NEWSポストセブン
高校時代の安福容疑者と、かつて警察が公開した似顔絵
《事件後の安福久美子容疑者の素顔…隣人が証言》「ちょっと不思議な家族だった」「『娘さん綺麗ですね』と羨ましそうに…」犯行を隠し続けた“普通の生活”にあった不可解な点
デート動画が話題になったドジャース・山本由伸とモデルの丹波仁希(TikTokより)
《熱愛説のモデル・Nikiは「日本に全然帰ってこない…」》山本由伸が購入していた“31億円の広すぎる豪邸”、「私はニッキー!」インスタでは「海外での水着姿」を度々披露
NEWSポストセブン
優勝パレードには真美子さんも参加(時事通信フォト/共同通信社)
《頬を寄せ合い密着ツーショット》大谷翔平と真美子さんの“公開イチャイチャ”に「癒やされるわ~」ときめくファン、スキンシップで「意味がわからない」と驚かせた過去も
NEWSポストセブン
生きた状態の男性にガソリンをかけて火をつけ殺害したアンソニー・ボイド(写真/支援者提供)
《生きている男性に火をつけ殺害》“人道的な”窒素吸入マスクで死刑執行も「激しく喘ぐような呼吸が15分続き…」、アメリカでは「現代のリンチ」と批判の声【米アラバマ州】
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン