ライフ

猫とビールが楽しめる本屋の店主が語る漫画『トラとミケ』

『トラとミケ こいしい日々』第23話「雪解の候」より

 名古屋にあるどて屋『トラとミケ』を舞台にほっこりしたストーリーが描かれる漫画『トラとミケ』(ねこまき・作)。その単行本第2巻は発売するや大反響。たちまち重版が決まった。擬人化されたネコたちの切なくもあたたかい日常を全編フルカラーで描いたこの作品は、とりわけネコ好きの間で人気になっている。そこで、東京・三軒茶屋にある猫と本とビールが楽しめる本屋「Cat’s Meow Books」の店主・安村正也さんに、『トラとミケ』の魅力を綴ってもらった。

 * * *
「保護猫が店員の猫本専門店です」と当店のことを説明すると、「???」という顔をされることがあります。そこで「店長はネコですが、私はニンゲンの店主です」と加えると、わかったような、わからないような、それでもとにかく笑顔になっていただけます。

 この漫画の舞台、老舗のどて屋『トラとミケ』の店主はまさにネコ。いや、店主どころか、インターネットもあれば、もうすぐオリンピックまで来そうな世界なのに、登場するのはみんなネコ。そして、作品のなかには、常にふんわりとした笑顔があふれています。

 人情ばなしが大衆食堂や居酒屋で繰り広げられ、読むニンゲンをじんわり、ほっこりさせる物語はたくさんありますが、“ええ話”のキャラを全員ネコにされたら、そりゃあもう、膝に乗ったネコがそのまま寝ちゃったくらい心が温まるでしょ(伝われ)。

 猫本専門店をやっていると、お客様からのリクエストで「ネコがひどい目にあわない本」「最後に悲しくならない本」を読みたいという声を聞くことがよくあります。そこに「コミックで」というご要望が重なったとき、「必ず幸せな気持ちになれます」とおススメしているのが、この『トラとミケ』です。

 このたび晴れて第2巻が刊行されたわけですが、1巻からそろえて本棚に並べているニンゲンを見かけたら、それは“ええ人”間違いなし(2冊とも当店で買われていたら“もっとええ人”)。

 その“ええ人”たちを惹きつけているのは、まぎれもなく作者ねこまきさんの描く世界観でしょう。もちろん丹念に読みこめば、どなたでも“ええ話”なのは分かるのですが、フルカラー化された単行本をパッと開いて目に飛び込んでくる色づかいと手書き文字だけで、「あっ、これは優しい本だ」と手に取ったニンゲンを安心させるオーラが出ています。

関連キーワード

関連記事

トピックス

(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト