新型コロナウイルスの影響で人出が少ない夜の新宿(EPA=時事)
「個人(タクシー)なら休んでますよ、でも少しでも稼がなきゃいけないしね」
確かに個人タクシーで余裕があるなら休むのもありだろう、実際、ゴールデンウィーク中は休んでいた個タクの運転手を何人か知っている。彼らは口を揃えて「人なんか歩ってなかった」と愚痴っていた。リモートワークで会社に行く人そのものも少なかったのもあるし、飲み屋に行く人も少なかった。それでも新村さんは走ったことになる。
「全然金にならなかったけどね、娘のバイト代のほうが高かったよ」
そう言って笑う新村さん、どうやら娘さんがいるらしい。家族のことは立ち入らないことにする。でもゴールデンウィーク、あれだけ都心が空いている経験なんてなかなかないのでは?
「いや、あれだけガラガラだと逆に不安になりますよ、道が空いてて気持ちいいとかなかった、それこそどうなるんだろうと。先々のことばかり考えました」
夜の街と歌舞伎町に対する集中砲火と風評はさしもの歌舞伎町も閑散となった。失政のめくらましか、コロナ禍の不満を押し付けるための生贄か。影響を受けるのは「夜の街」の人だが、新村さんのようなエッセンシャルワーカーも巻き込まれてしまう。
女の子はマスクしてるのにね。男はだめだね
新村さんはまだ50代後半とのことで、家族のためにまだまだ働かなければならない。それにしてもタクシーに関して思うのは、震災でも台風でも洪水でも、都市の定点カメラでタクシーだけは走っている。核が落ちても走ってそうだ。
「去年も台風で大変でしたよ、あれ(台風)は一瞬でどっか行っちゃいますけど、やっぱ怖いっちゃ怖いですね。東日本(大震災)の時は普通に走ってました。言っちゃ悪いけど電車動かないんで稼げました」
そういった自然災害はベテランとして何度も経験している新村さんだが、いつ終わるともわからない疫病は私たちと同様に初めてだ。天変地異は交通機関がマヒするので危険はともかくタクシーの稼ぎ時、しかし疫病はそうはいかなかった。
「だから自粛解除で活気が戻って、少しホッとしたんです、戻ってきたのは6月くらいからかな、そのまま戻ると思ってました」