国内

「次のバッシング先になるのは嫌だな」タクシー運転手は呟いた

新宿、とくに歌舞伎町はタクシー利用者が多い街だった

新宿、とくに歌舞伎町はタクシー利用者が多い街だった

 タクシーは災害に強い。地震や台風で列車や地下鉄が止まっても動き続け、2011年の東日本大震災では多くの人が自主的に乗り合いしてまで利用した。さかのぼると、1923年の関東大震災でも唯一、動けた公共交通機関として重宝された記録がある。だが、新型コロナウイルスに直面しているいまは、なかなか強みを発揮できない。俳人で著作家の日野百草氏が、今回は、新宿を中心に走る50代タクシー運転手に、現在の利用客の様子やこれからについて聞いた。

 * * *
「次はどこが叩かれるんでしょう、まさか私たちじゃないでしょうね」

 新宿歌舞伎町の深夜2時過ぎ、花道通りで拾ったタクシー運転手の新村さん(仮名、乗務員証とは別)とひとしきり雑談。自宅は多摩の田舎で遠いので高速に乗ってもらう。それなりの長距離、新村さんもありがたいと喜んでいた。自然と話が弾む。

「だって私たちもコロナ運んでるかもしれないでしょ?」

 新村さんは新宿を中心に走っているという。とくに歌舞伎町は稼げる場所だった。過去形なのは、もう全然稼げないからだ。

「いまはコロナ前の5分の1くらいですね、緊急事態中で酷い日なんか10分の1だったかな、乗るだけ無駄でした」

 新村さんの会社はある程度の保障があったので助かったという。他社だが緊急事態宣言のさなか、中堅タクシー会社が600人の解雇を発表、のち撤回したことは記憶に新しい。

「うちも慌てた連中が会社に詰め寄ったみたいで、クビかになるのか、補償はあるのかって。うちはちゃんとしてくれたけど、あの事件は人ごとじゃないです。街にろくに客なんかいないのは、走ってる私たちが一番わかってますから」

 それでも新村さんは走らざるを得ない。タクシー会社も減車には消極的だ。

「だって歩合で食ってますからね、走らないよりはマシです。それに会社だって稼げる運転手に辞められても困るし金も回らない。仕事に困ったらタクシーなんて言われますけど、まともに続く人はほとんどいません、人手不足なのは(儲けの)上がりを出せなくて続かないからってのもあるんです」

 タクシーもノルマがあり、それを満たせなければ仕事を続けられない、いわゆる「足切り」が存在する(地域や会社によっては固定給制もある、A型賃金とも呼ばれる)。保険外交員のようなもので、完全歩合制か、基本給があってもそれだけでは生活できないほど安いことが大半である(前者はB型賃金、後者はAB型賃金とも)。つまりキツいのはもちろんだがそれ以前に歩合分が稼げなければ生活できないので自然と辞めざるを得なくなるわけだ。つまり仕事が何年も続いている人は優秀な「稼げる人」ということになる。どんな仕事もお金になる人以外いらないのが現実社会だ。ちなみに昔は「乗務員負担」としてタクシーの利用料やクレジット決済の手数料も運転手が負担させられたが、国の指導もあって最近は少なくなった(フルコミッションのB型賃金は除く)。

関連記事

トピックス

大谷翔平(左/時事通信フォト)が伊藤園の「お〜いお茶」とグローバル契約を締結したと発表(右/伊藤園の公式サイトより)
《大谷翔平がスポンサー契約》「お〜いお茶」の段ボールが水原一平容疑者の自宅前にあった理由「水原は“大谷ブランド”を日常的に利用していた」
NEWSポストセブン
かつて問題になったジュキヤのYouTube(同氏チャンネルより。現在は削除)
《チャンネル全削除》登録者250万人のYouTuber・ジュキヤ、女児へのわいせつ表現など「性暴力をコンテンツ化」にGoogle日本法人が行なっていた「事前警告」
NEWSポストセブン
主演映画『碁盤斬り』で時代劇に挑戦
【主演映画『碁盤斬り』で武士役】草なぎ剛、“笠”が似合うと自画自賛「江戸時代に生まれていたら、もっと人気が出たんじゃないかな」
女性セブン
水卜麻美アナ
日テレ・水卜麻美アナ、ごぼう抜きの超スピード出世でも防げないフリー転身 年収2億円超えは確実、俳優夫とのすれ違いを回避できるメリットも
NEWSポストセブン
撮影現場で木村拓哉が声を上げた
木村拓哉、ドラマ撮影現場での緊迫事態 行ったり来たりしてスマホで撮影する若者集団に「どうかやめてほしい」と厳しく注意
女性セブン
5月場所
波乱の5月場所初日、向正面に「溜席の着物美人」の姿が! 本人が語った溜席の観戦マナー「正座で背筋を伸ばして見てもらいたい」
NEWSポストセブン
大家志津香
《2024年後半、芸能界は誰がくる?》峯岸みなみに代わり“自虐”でオファー増加の元AKBメンバーなど5人
NEWSポストセブン
遺体に現金を引き出させようとして死体冒涜の罪で親類の女性が起訴された
「ペンをしっかり握って!」遺体に現金を引き出させようとして死体冒涜……親戚の女がブラジルメディアインタビューに「私はモンスターではない」
NEWSポストセブン
氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン