祖父の命日に思い出す女優
「確かに優月さんの半生は波瀾万丈ですし、劇的で悲惨な話のほうが読者の需要があるのかもしれません。ただ私が今回最も心がけたのが、ウソや綺麗事は一切書かないこと、それでいてできれば前向きな本にしたいということでした。
たぶん本書最大の特徴はAV監督でも専門ライターでもない部外者の私が訊き手を務めたことで、その分、詰めの甘さもあるとは思う。私は人の嫌がることを訊けない、イイ人なので……(笑い)。ただ優月さんの自立にかけた思いとか、AVと風俗の2本柱で娘を育て上げ、今では娘さんも同じ道に進もうとしている当真ゆきさん・つむぎさん母娘の強さと明るさとか、訊いてみると暗い話ばかりじゃないんですよ。
今回取材に応じてくれた方々は皆さん自己肯定感が強くて聡明で、カリスマ性にも富んでいました。自分は後悔してないし、したくないと、取材に答えることで形に残したかったんだと思います」
AV女優に対し「お世話になった」という言い方がある。寺井氏にも中学、高校、大学と、その時々に女神がおり、決して肉欲だけではない関係性が行間に滲むのも面白い。