西森氏は、『MIU404』は劇中の犯罪を通して、“日本の歪(いびつ)な構造”が見えると指摘する。
「『MIU404』は、伊吹(綾野)と志摩(星野)のバディ以外にも、後輩エリート刑事の九重(岡田健史)、ベテラン警部補の陣馬(橋本じゅん)、女性の隊長である桔梗(麻生久美子)などのキャラクターが立っていて、刑事たちの人間ドラマとしても楽しく見られるようになっています。
でも実はその上で、各話に登場する犯罪者も、社会的な弱者であったり、社会的におかしいことに憤ってやむなく犯罪を犯してしまったりといった事情を抱えており、背景が緻密に描かれています。そのため劇中の犯罪から、日本に実際に存在する歪な構造が見えるようになっています。ほかの作品も同様ですが、やはり、幾重にもなった観方(みかた)のできるドラマであることが魅力だと思います」(西森氏)
社会に対する問題意識とエンターテインメントを両立させる手腕こそが、野木作品の持ち味だ。“ドラマ離れ”が叫ばれる昨今。それでも名作は生まれ続けている。
●取材・文/原田イチボ(HEW)