キャラクター造形ということでいえばこの二人以外にも松本穂香、松本まりか、細田善彦、斎藤由貴とそれぞれの役者が各持ち場で人物をきっちりと演じていて、それがピタっとはまっているのも小気味良いのです。
小さな運送会社が急成長を遂げ次々に会社を買収し大きくなっていく。金儲けと欲にまみれた社長が平気で他者を蹴落としていく。資本主義の膿、社会の矛盾が一人の人生を狂わせていく。社会がまだIT化でカサカサと乾燥しきってしまう前の、湿った街角と体温を感じさせる時代。その中で資本主義に呑み込まれていった悲劇にスポットを当てるあたり、松本清張ドラマにも通じる質感です。匂いがあり、触感あり、闇がある「昭和っぽさ」が、物語に奥行きを作り出しています。
新型コロナ感染拡大で2ヶ月の撮影中断をよぎなくされた本作品。しかしそれが結果として、良い意味で発酵の期間となり、行間の味わいや陰翳を感じさせる作品になったのかもしれません。撮影ができることの喜びは、次はいつ中断してしまうのかという緊張感と隣り合わせ。やっとクランクアップしたそうですが、2ヶ月という中断の影響を色濃くうけた、今後の展開に一層注目したいと思います。