その『お菊の皿』など、歌武蔵の高座を収めたCD「大落語集」シリーズが日本コロムビアより発売されている。現在まで出ているのは「支度部屋外伝/植木屋娘」「強情灸/らくだ」「壺算/死神」「天災/お菊の皿」「鹿政談/甲府い」の5枚。

『植木屋娘』は上方の演目で、東京では歌武蔵の他にあまり演り手がいない。『らくだ』も上方の型で、屑屋はあくまで陽気なお調子者。東京の演者にありがちな悲惨さが漂うことなく笑いが絶えない。『死神』は時代設定が現代という珍しい演出で、ラストも独特。やっぱりこの死神も太ってて陽気だ。『甲府い』は登場する善人たちが生き生きと描かれて実に気持ちがいい。

 その他、どの噺も歌武蔵の語り口の妙が聴き手を引き込んで離さない逸品ばかり。今年7月から日本コロムビアは「三遊亭歌武蔵 大落語集」他の落語コンテンツのサブスクリプション配信を解禁、スポティファイやアマゾンミュージック等のストリーミングサービスで聴けるようになった。ぜひお試しを。

●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。

※週刊ポスト2020年8月28日号

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