応募意向の背景に「コロナ」と「20億円給付金」
それにしてもなぜ、片岡町長は5期目(2005年から4回連続無投票当選)のこの時期になって突然、応募への意思を表明したのか。本人はマスコミ各社の取材に、新型コロナの影響で産業が打撃を受けていること、町税収入が年間2億円ほどしかない町財政の将来への不安などを挙げている。
そもそも寿都町は一体、どんな自治体なのか。調べてみるといろんなことが見えてきた。人口は2903人(7月末現在)で、最盛期の3分の1以下に減った。65歳以上の老年人口割合が40%という典型的な少子高齢化、人口減自治体である。
主要産業は水産業と水産加工業。昭和30年代まではニシン漁で大賑わい。昭和32年には人口が1万547人もあり、寿都─黒松内を私鉄の寿都鉄道が走り、ニシンを運んだ。しかし、ニシンが獲れなくなり、現在はホッケやサケ、いかなご、ホタテ、カキ、なまこ等の収穫と水産加工がメインだ。
寿都町のサケの採卵風景(時事通信フォト)
全国有数の強風の町としても有名で、自治体として初めて1989年に小規模な風力発電を導入。その後、売電事業としての風力発電施設を本格的に導入した。現在は11基が洋上で稼働している。この風力発電による売電事業を「寿都ですぐ金になるのは風だ」と言って、反対派を押し切って推進したのが、今の片岡町長だ。常に頭の中に町の財政のことがあるのだろう。
「強風の町」で有名な寿都町の風力発電(時事通信フォト)
寿都町の財政規模は歳入・歳出ともに年間53億円程度。このうち地方税はわずか2億4000万円で、歳入全体の5%程度しかない。風力発電の売電収入も数億円あるが、設備費用の返済金などもあり町に入るのは一部に過ぎない。18億円超の地方交付税が頼みの綱だ。そんな財政難の町にとって2年間限定とはいえ、文献調査に応じることで入ってくる最大20億円の交付金は魅力だろう。