死ぬほどがんばった後はなぜか笑いが込み上げる
最初はあたりを見回すほどの余裕で、さすがプロによるリハビリの成果だと感心した。途中には休憩所もあり休み休み上ったが、案の定、100段を超えた頃にはバテバテ。私も足が重くなり、辞退しなかったことを猛烈に後悔しながら「ママ大丈夫? 下りる?」と覗き込むと、「上るわよ!」と言わんばかりの目をした。気丈な態度とは裏腹に、母の筋肉も心臓も、全身が悲鳴を上げているようにも見えた。でももう前に進むしかない。
ほかの観光客が心配そうに、迷惑そうに追い越していくのを横目に見ながら、娘が母の腕を抱え、私が尻を支え、ジワジワ時間をかけて上った。「おばあちゃん、がんばって。あと少しだよ!!」と言う娘の声でわれに返ると、頂上は間近。
そして尻を押す腕がフッと軽くなったかと思うと、母が頂上に立ち、なぜか顔をクシャクシャにして笑い声を上げていた。最後、負傷者搬送のような格好になったのが自分でもおかしかったのか、それとも目標達成快挙の雄叫びか。
危険と愉快は背中合わせ。内心ヒヤヒヤだったが、エキサイティングな一日だった。
※女性セブン2020年9月10日号