芸能

小野寺昭が振り返る『太陽にほえろ!』 演技注文はなかった

殿下役を演じた小野寺昭

 令和の時代になっても人気の刑事ドラマは数知れないが、昭和の時代にもまた、熱狂的に愛されたドラマがあった。なかでも刑事ドラマの金字塔となったのが『太陽にほえろ!』だ。

 多くのスターを輩出した『太陽にほえろ!』だが、そのなかでも、甘いマスクで品があり、女性や子供にやさしいことから「殿下」と呼ばれていた島公之刑事を演じたのが小野寺昭だ。女性からの人気が高く、殿下が交通事故死したドラマの放送終了後、現場にファンの手で殉職碑が建てられたほどだ。

『太陽にほえろ!』がいかにして作られたのか、小野寺に話を聞いた。

 * * *
 ぼくは舞台出身で当時はテレビにあまり出ていなかったため、萩原健一さんや松田優作さんといった個性の強い出演者の中で、当初、存在感が薄かったんです。そこでプロデューサーらが、“女性心理のエキスパート”というキャラ設定をしてくれたんです。

 それで少しずつ認知されるようになったのですが、人気を決定づける節目となったのは、殿下が犯人に麻薬漬けにされてしまう「鶴が飛んだ日」(第79話)でした。

 紳士的なキャラクターで通っていた殿下が麻薬で壊れていくシーンは衝撃的だったのでしょう。ぼくもこの撮影はとても印象に残っています。現場には薬物治療の専門家に来ていただき、麻薬中毒になるとどうなるかを指導してもらいました。

 そして、一晩かけて同僚刑事の山さん(露口茂さん演じる山村精一役)と禁断症状を耐え抜き、薬物を抜くシーンを撮影したんです。そのときの演技は後日、“アメリカ人俳優フランク・シナトラが映画『黄金の腕』で演じた麻薬中毒者を彷彿とさせる”などと高評価をいただき、とてもうれしかったのですが、そもそもあのシーンはぼくだけの力ではなく、露口さんとの掛け合いから生まれたもの。

 このドラマでは、監督からの演技注文はあまりなく、役者が思い思いに演じられることが多かったんです。ですから、役者同士の試行錯誤が思いがけず名シーンを生む瞬間がよくありました。

 スタッフのチームワークも抜群で、現場の雰囲気がとてもよかった。内容のおもしろさはもちろんですが、そういった関係性のよさも長寿番組になった理由の1つだと思います。

 8年間演じて現場を去った後、ぼくは『太陽にほえろ!』を見ないようにしました。自分から、ほかの役も演じたいからと殉職を申し出たのですが、やはり未練があったんです。それだけ思い入れのあるドラマは、ほかにはありません」

【プロフィール】
小野寺昭/1943年生まれ。舞台やドラマなどで幅広く活躍。大阪芸術大学短期大学部客員教授も務める。

※女性セブン2020年9月17日号

関連記事

トピックス

筒香が独占インタビューに応じ、日本復帰1年目を語った(撮影/藤岡雅樹)
「シーズン中は成績低迷で眠れず、食欲も減った」DeNA筒香嘉智が明かす“26年ぶり日本一”の舞台裏 「嫌われ者になることを恐れない強い組織になった」
NEWSポストセブン
テレビの“朝の顔”だった(左から小倉智昭さん、みのもんた)
みのもんた「朝のライバル」小倉智昭さんへの思いを語る 「共演NGなんて思ったことない」「一度でいいから一緒に飲みたかった」
週刊ポスト
陛下と共に、三笠宮さまと百合子さまの俳句集を読まれた雅子さま。「お孫さんのことをお詠みになったのかしら、かわいらしい句ですね」と話された(2024年12月、東京・千代田区。写真/宮内庁提供)
【61才の誕生日の決意】皇后雅子さま、また1つ歳を重ねられて「これからも国民の皆様の幸せを祈りながら…」 陛下と微笑む姿
女性セブン
筑波大学・生命環境学群の生物学類に推薦入試で合格したことがわかった悠仁さま(時事通信フォト)
《筑波大キャンパスに早くも異変》悠仁さま推薦合格、学生宿舎の「大規模なリニューアル計画」が進行中
NEWSポストセブン
『世界の果てまでイッテQ!』に「ヴィンテージ武井」として出演していた芸人の武井俊祐さん
《消えた『イッテQ』芸人が告白》「数年間は番組を見られなかった」手越復帰に涙した理由、引退覚悟のオーディションで掴んだ“準レギュラー”
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
NBAレイカーズの試合観戦に訪れた大谷翔平と真美子さん(AFP=時事)
《真美子夫人との誕生日デートが話題》大谷翔平が夫婦まるごと高い好感度を維持できるワケ「腕時計は8万円SEIKO」「誕生日プレゼントは実用性重視」  
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン