芸能

『わたナギ』で「おじキュン」の本質 韓流ドラマとも共通点

社会に与えたインパクトも大きかった(時事通信フォト)

 多くの人が癒やされた作品だったに違いない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 注目を集めたドラマ『私の家政夫ナギサさん』の最終回の視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)が19.6%を記録しました。TBSは急遽「特別編」の放送を決定。8日に放送された『私の家政夫ナギサさん 新婚おじキュン!特別編』の視聴率も14.9%という好数字を叩き出しました。

 このドラマ、ストーリーだけでなく社会に影響を及ぼした点も興味深いものがありました。例えば大森南朋さんが演じた「家政夫ナギサさん」が、女性を中心に胸キュンの好評価。それを見てか、「中年男性は今、若い女性に求められている」という誤解も一定数発生したもようです。一部ではおじさんとの合コンが流行ったり、料理できるおじさんが人気という話も耳に入りましたし、「おじキュンに乗っかろうとする上司に困ってます」という感想も目にしました。

 いや、それってちょっと違うのでは。大森さんのエプロン姿と柔和な笑顔、引き算の演技がウケたわけであって、おじさん全体への期待値が上がったわけではないはずです。

 それにしても視聴率がグングン右肩上がりで最後は20%に届こうかという勢い。大森さんの「おじキュン」だけではそこまで引っ張れなかったはず。いったい「いかなる点」がこれほど視聴者の胸に刺さったのか? 改めて振り返ってみると──。

【1】疑似的片付け効果
 自分の家もスルスルと片付いていくような爽快感があって引き込まれた。視聴者のスッキリ度が増幅。

【2】受け止め効果
 家政夫ナギサさんは、とりあえず何でも受け止めてくれる存在。決してイライラして言い返したりせず、笑顔を絶やさず、ストレスを生み出さない、説教しない。大森南朋のオバサンぶりが妙にはまっていて女性にとっての癒やし効果絶大。

【3】「家事はシャドウワークではない」と言い切った
 極めつけのセリフ「家事は仕事です」。これまで正当に評価されてこなかった隠れた労働としての家事。そこに正面から光を当て共感を呼んだ。

 まずはその3点を挙げたいのですが、加えて中盤以降はナギサさんの過去のエピソード等に絡めて「人は一人では生きられない」「見守ってくれる存在によって自分も生かされている」「幸せな生き方とは何なのか」といった深掘りも加わり、より魅力なドラマになっていったと思います。

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