iDeCo、個人年金保険の節税メリットを活用
国の狙いは、国民を長く働かせた上で、公的年金だけでは不足する老後資金を「じぶん年金」で埋めさせることにあるとも言い換えられる。
“公的年金だけじゃ老後は生活できません”と公言すれば批判が殺到するのが目に見えているので、その代わりに確定拠出年金などに大きな優遇措置を用意して、政策的にそちらへ誘導しようしているのだ。それを理解した上で、活用をしていきたい。
iDeCoの毎月の掛け金の上限は、会社員が原則2万3000円、厚生年金に加入できない自営業は6万8000円。社会保険労務士の北山茂治氏はこういう。
「こうした掛け金が全額所得控除の対象になる上に、運用益や配当も非課税。60歳以降になってから一括で受け取れば退職金所得控除も適用されます」
年収500万円の会社員がiDeCoで月2万3000円を10年間積み立てていくと、それだけでざっと50万円以上の節税効果が見込める。
それとは別に運用益も期待できる。
「比較的リスクの低い米国債中心のファンドに投資して、40歳から月2万円を年利1%で運用すれば、60歳で528.5万円になり、運用益は48.5万円です。今回の制度改正で65歳まで運用できるようになったので、さらに5年運用を続けると総額677.8万円、運用益77.8万円まで資産を増やせます」(同前)
ただ、確定拠出年金は始めるにあたり加入資格の証明など、煩雑な手続きが必要なことをネックに感じる人は少なくない。そこで前出・北村氏は「個人年金保険」への加入を選択肢として挙げる。
「加入手続きが簡単で個人年金保険料控除によって受けられる節税メリットは大きい。たとえば、年収500万円の人が毎月7000円、年間8万4000円を積み立てるだけで、所得税と住民税が合計1万円ほど戻る。
国が年金支給開始年齢引き上げを目論んでいる以上、使える制度は最大限活用して備えなくてはなりません」
※週刊ポスト2020年9月18・25日号