「競争させたら安くなる」は過去の常識
もちろん、コロナを理由に杜撰なマンション管理に拍車がかかるような管理会社であれば、サービスの品質向上を促す話し合いや管理費(ランニングコスト)の見直し交渉は積極的に行うべきだろう。だが、一足飛びで安易に管理会社の変更を行うと、かえって大きなリスクを背負うことにもなりかねないという。
「近年、売主系列の管理会社のほかに、ローコストが売りの独立系管理会社も数多くあります。独立系はマンションの清掃業務などを細かく見直し、スペックダウンも含めて管理委託費をどんどん削減していきます。また、そうした管理会社を勧めて成功報酬を得るコンサルティング会社もあります。
しかし、仮に管理費が削減できたとしても、サービスレベルが著しく低下したり、日常的な修繕費用が高くなったりして、結果的にコストダウンに繋がらなかったというケースはよくあることです。『管理会社を競争させたら安くなる』という常識をいまだに持っている方も多いと思いますが、もうかつてとはマーケットが大きく異なっているのです」(前出・土屋氏)
コロナで在宅住民が増えたマンションはゴミで溢れ返っている
土屋氏が相談を受けたケースの中には、住民からの相次ぐ無謀なコスト削減要求に「これ以上は利益が見込めないので…」と管理会社のほうから“撤退通告”を受けた事例や、新しく管理を引き受けてくれる会社が見つからないうえに、元の管理会社にも継続してもらえず、最終的に「自主管理」を強いられているケースなど、さまざまな乗り換え失敗例が寄せられている。
「一旦自主管理にしてしまうと、その後も管理会社に引き受けてもらえる可能性が厳しくなります。そうならないように、今一度『現行の管理会社では本当に改善できないのか?』と住民みなでじっくり話し合い、管理会社の変更は“最後の手段”にしてほしいと思います」(土屋氏)
マンション管理を良くしたいという強い思いがかえって空回りし、マンションの“老い”を一層加速させてしまっては本末転倒だ。