なぜ分断を進めるような大統領が選挙で当選したのかについては、先日出版した、『池上彰のまんがでわかる現代史 欧米』の漫画やコラムでご確認ください。これを読むと、大統領が分断を進めたとはいえ、そもそもアメリカ社会で分断が進んでいたからこそトランプ氏のような大統領が誕生したのだと見ることも可能でしょう。
さて、話を戻すと「ブラック・ライブズ・マター」運動について、トランプ大統領は「暴動はけしからん」と言い始め、「Law & Order(法と秩序)」という言葉を使い出しました。「Law & Order」って元々は、ニクソン大統領が使った言葉ですが、今ではアメリカのNBCテレビの人気刑事・法廷ドラマのタイトルとして有名です。トランプ大統領はそこから知ったんじゃないかというのは、単なる私のツッコミですが(笑)、トランプ大統領は、「法と秩序こそ大切なんだ」「法と秩序を守るのは俺なんだ」と言っているわけです。
今年の11月3日はアメリカ大統領選挙の日ですが、トランプ大統領の相手になるのが、民主党のバイデン候補。このバイデン候補について、トランプ大統領は「民主党は過激派に乗っ取られてしまって秩序を全く維持できなくなるんじゃないか」と言い出して、キャンペーンを始めました。
バイデン候補の支持率は変わっていませんが、トランプ大統領の支持率が今、じりじりと上がってきていて、このままいくとどうなるかわかりません。
バイデン陣営の副大統領候補は、カマラ・ハリスさんという黒人ですが、お父さんはジャマイカから来た人で、お母さんはインド人。奴隷の子孫ではないということで、意外に黒人からの支持が伸びていません。
さらにアメリカには「オクトーバー・サプライズ(October Surprise)」という言葉があります。直訳すると、「10月のびっくり」。前回の大統領選挙では、ヒラリー・クリントン候補が国務長官時代、自分のプライベートなアカウントを使ってメールのやりとりをしていたことが問題になりました。FBIの捜査はいったん終わったのですが、10月の下旬になって、「また新しい証拠が出てきたので、もう一度捜査します」ということになりました。