全米が見守った討論だったが、中身は薄かった(AFP=時事)
黒人への警察の暴力、さらに抗議デモの暴徒化などが繰り返されたことから、法と秩序の問題も注目された。トランプ氏は、バイデン氏が上院司法委員会委員長だった当時に、アフリカ系アメリカ人を「凶悪な常習犯罪者」と呼んだと主張、それに対してバイデン氏は、そんなことは言っていないと否定した。事実としては、当時バイデン氏は、「救いようのない常習犯が、街で常に被害者を探している」と述べていた。トランプ氏は、これがアフリカ系の人を指した発言だと言いたかったようだ。トランプ氏は繰り返しバイデン氏の発言をさえぎり、「法と秩序を重視するか言ってみろ。『法執行』とさえ言えないのは、極左支持者を失うからだろう」と食ってかかった。
中盤の見せ場は、トランプ氏がこの日、繰り返し攻撃材料にしたバイデン氏の息子、ハンター・バイデン氏の「ロシア資金疑惑」をサプライズで持ち出したシーンだった。共和党の上院議員団による調査の結果として、ハンター氏がロシアの財閥から350万ドルを受け取ったと指摘した。これが問題となるカネなのかどうか、今後に注目したいところだ。
あとは、最高裁判事指名の是非や、郵便投票の是非、選挙当日の監視や選挙結果の扱いなど、これまでも論争になってきたテーマについて、やはりかみ合わない言い合いが延々と続いたという印象だった。
はっきり言って、今回の討論会には勝者はいなかった。討論としてレベルが低く、互いに相手への敬意が感じられず、後味の悪い政治ショーとなってしまった。