国際情報

トランプvsバイデン「初のテレビ討論会」は勝者なき泥仕合

77歳と74歳の罵り合いに終始した(AFP=時事)

 現地時間9月29日に、大統領選挙の初めてのテレビ討論会が開かれた。互いにじっくり準備して臨んだ天王山の戦いだけに、注目度も高かった。勝敗はいかに? ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏がジャッジした。

 * * *
 大統領選挙のテレビ討論会といえば、定番の図式は「挑戦者と受けて立つ現役大統領」である。しかし「トランプvsバイデン」の戦いはそうは見えない。バイデン氏は、オバマ政権で8年間、副大統領を務め、すでに77歳と高齢。フレッシュな挑戦者というイメージはない。それがあれば、もう少しトランプ大統領に鋭い攻撃を仕掛けられたかもしれない。

 トランプ氏は、「あなたはワシントンで47年間政治家をやってきた。私は47カ月しかやっていない。あなたは47年間もあって何をやったのか?」と斬り込んだ。バイデン氏はそれには答えず、トランプ氏を「嘘つき」とか「この人は自分の言っていることがわかっていない」などと馬鹿にする。挙げ句の果てに「黙れ!」と語気を強める始末だった。

 筆者が気になったのは、バイデン氏がトランプ氏を何度も「This Man」と呼んだことだ。いくら戦いの相手であっても、いやしくも一国の大統領を「この男」呼ばわりすることは、過去のテレビ討論会でも記憶がない。

 いずれにせよ、最初のテレビ討論会は、悪口、非難の応酬であって、それ以外の何物でもなかった。中身も実りもない討論は、今のアメリカを象徴しているようだった。バイデン氏は他にも、トランプ氏を「アメリカ史上最悪の大統領」とか「プーチンの子犬」などと呼んだ。トランプ氏はバイデン氏の息子を「不名誉の除隊をさせられた」と中傷し、バイデン氏本人のことは「社会主義者の言いなり」などと攻撃した。

 もちろんコロナ対策も議題になった。バイデン氏はトランプ氏に対し、「2月の時点で恐ろしい病気だと承知していながら、パニックに陥ったのか、それとも株価を見ていて何もしなかった」と批判し、「すぐにもっと賢くならなければ、もっと大勢が死ぬ」と詰め寄った。するとトランプ氏は怒りを隠さず、「そっちはクラスでもビリのほうで卒業したくせに、『賢い』なんて言葉を私に使うな。絶対に使うな」と、政策とは関係ない反論を繰り出す。

 討論会直前にニューヨーク・タイムズが報じたトランプ氏の納税額の問題については、司会者がトランプ氏に「2016年と2017年に払った連邦所得税は750ドルだというのは本当ですか」と尋ねた。トランプ氏は「何百万ドルも払った」と答えた。そのうえで、自分は不動産開発業者だったのだから制度に則って節税するのは当然だ、そういう税制を作ったのはバイデン氏たちだと主張した。

関連記事

トピックス

62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
今回の地震で道路の陥没に巻き込まれた軽自動車(青森県東北町。写真/共同通信社)
【青森県東方沖でM7.5の地震】運用開始以来初の“後発地震注意情報”発表「1週間以内にM7を超える地震の発生確率」が平常時0.1%から1%に 冬の大地震に備えるためにすべきこと 
女性セブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン