持続的な「死にたさ」に強い衝動が重なると、実行に至ってしまう
死にたい気持ちを後押しする最後のスイッチとなるのが「衝動」だ。
「希死念慮(死にたいという気持ち)に、“いま死にたい”という衝動が加わった瞬間、人は自殺してしまう。多くの人は、希死念慮を抱えていても、衝動性が高まっていないと自殺にはいたりません。小さな子供を残して突発的に自殺するような場合も、急に衝動性が高まれば起こりうる話です」(樺沢さん)
このとき、脳内では“幸せホルモン”と呼ばれる「セロトニン」の量が減っている。脳科学者の杉浦理砂さんはいう。
「セロトニンは、意欲や喜びを司る『ドーパミン』と、ストレスと闘う『ノルアドレナリン』という2つのホルモンのバランスを取る役割も担っています。これが減少すると感情のコントロールが難しくなって、衝動を止められなくなります」(杉浦さん)
どんなときに衝動性が高まるかは個人差があるが、気をつけたいのが「飲酒」だ。
「お酒を飲むと衝動の敷居が下がり、高層マンションから飛び降りるなどの行為もできてしまう。アルコールはストレスを一時的に忘れて問題を先送りするだけで、心の状態を悪化させて衝動性を高めるため、非常に危険です。実際、自殺で亡くなった人の3分の2が飲酒をしていたというデータもあります」(樺沢さん)
三浦さんや竹内さんも、お酒を好んでいたと報じられる。アルコールが後押しする衝動は恐ろしいが、こうした“死への衝動”は長くは続かない。
「衝動が続くのは5~10分で、長くても30分ほど。この間を乗り切ればある程度は落ち着いて、“いますぐ死にたい”という状態ではなくなります」(樺沢さん)
では、どうすれば“死にたさ”と衝動から逃れられるのだろうか。何より大切なのは、規則正しい生活を送って体調を整えるという、“基本中の基本”だ。
「朝起きてから15~30分ほど散歩して太陽の光を浴びると、脳内のセロトニンが活性化して希死念慮や衝動性を抑えられます。朝日を浴びると、体内時計がリセットされて睡眠不足の解消にもなります」(樺沢さん)
それに加えて、「思考習慣の改善」を試みてほしい。
「過去の嫌なことや未来への不安など、ネガティブな思考を何度も反芻することを『マインドワンダリング(反芻思考)』と呼びます。