ふだんの運動部員は、常に時間に追われて生活している。授業以外に基礎トレーニングや練習の時間をしっかり確保しないとならないからだ。トップクラスになるほど体に負担が大きい練習をするので、その回復のための休養も欠かせない。自由に裁量できる時間が少ないためアルバイトのシフトも組みづらい生活で、思いついたときに夜遊びに出かけることはおろか、長時間、SNSの世界にひたることも難しい。彼らの多くは、一つのことに集中し追求する力が強いが、同時に同級生と比べて世間知らずなことも多く、そこにつけ込まれて足もとをすくわれやすいという側面もあろう。
東京都内のナイトクラブ支配人・K氏が筆者の問い合わせに対し声を潜めて言う。
「コロナの影響があっても、大学生やOB達が中心となって、ナイトクラブを貸し切ったイベントをやっています。ほとんどは酒を飲んで踊ったり歌ったりするだけなんですが、一部クラブのビップルームでは、イベント主催者や権力のある立場の学生らが集まり、大麻やコカインをやっていると噂になっています。そこには大学運動部に所属する有名選手の姿もあり、まさに地下パーティーの様相です」(K氏)
こうしたパーティーに参加した経験を持つ、都内の女子大生・坂本ハルナさん(仮名・20代)が、思い出すのも嫌だと前置きをした上で証言する。
「女子は無料、男子は2000円から人によっては5000円とか、パーティーの入場料が決まっています。タチの悪い男子グループに目をつけられたら、どんどん飲むように煽られて、酔い潰れたら別室に連れて行かれる…と聞きました。主催者や幹部が、鼻の周りを真っ白にして(筆者注:コカインを吸引した後と思われる)フラフラになってたり」(坂本さん)
2003年に被害届が出されたことで発覚した、インカレサークルを舞台にした「スーパーフリー事件」といえば、現在の30代以上であればピンと来るかもしれない。早稲田大学をはじめとした首都圏の有名大学のイベントサークルに所属するメンバーらが中心となり、女性に酒や薬物を飲ませ、輪姦を繰り返していたという前代未聞の事件だった。当然のごとく、事件発覚からしばらく、イベントサークルと称した卑劣なグループの存在は世間から大バッシングを受けて彼らの活動はおさまったかのように見えていたが、今も似たような光景が繰り広げられているという。
「パーティーの入場券を売るよう強要されたり、幹部の彼女にしてやると騙され、キャバクラや風俗で働くようになった女の子もいます。お金を持っていそうな男子がいれば、女子で囲んでおだててお金を出させる。普通の大学生なら、一度行けばいくらなんでも危ない場所だって思って行かなくなるはず。でもコロナで他にやることなくて、ノリで行っちゃってる子もいる」(坂本さん)
これらのグループの幹部は大学生だが、その幹部を取り仕切っているのはもっと年上の「イベント屋」であり、こうした人物たちは、反社会勢力との繋がりもある可能性がある。クラブイベントなど享楽的な環境で大学生を呼び込み、薬物を買わせるというのは常套手段。結局は反社会勢力の資金稼ぎのために、大学生が食い物にされているという構図だ。
現在は、すでに有名大学の運動部を中心に、こうしたイベントに参加したものがいないか、薬物を使っていないか、かなり大規模な調査が水面下で行われている。参加した人たちの中には有名アスリートの二世や、すでに企業などとスポンサー契約を結んでいるような学生がいるとも囁かれている。将来を期待される若い才能が、こんな残念なことで「芋づる式」に晒されることも、覚悟しておかなければならない状況だ。