俳優やミュージシャンなど幅広い層からもカルト的な人気を集める、「空耳アワー」が名物コーナーとなった面白さの秘密はどこにあるのか。お笑い評論家のラリー遠田氏は次のように分析する。
「『外国語の歌のフレーズが日本語に聞こえることがある』という現象自体は、テレビやラジオなどでもたびたびネタにされています。『空耳アワー』という企画の画期的なところは、その歌に合わせた映像を作って流しているところです。ネタになっているフレーズの箇所の少し手前から音楽と映像をスタートさせて、十分にフリをきかせてからオチにつなげることで、巧みに笑いを誘っています。
面白さの核心はネタとなるフレーズそのものにあるため、映像の方を過剰に面白おかしくする必要はありません。映像はあくまでもフレーズのためのフリになればいい。これといった特徴のない無名の役者を起用したり、フレーズで表現される状況を文字通り再現したりするのも、オチの面白さを引き立てるために意図的にやっているのだと思います」
“洋楽”と言っても、国籍もジャンルもさまざまな音楽を分け隔てなく取り上げ、シンプルだがシュールな映像と巧みに組み合わせることによって視聴者をクスリと笑わせる「空耳アワー」。コロナ禍によってますますストレスフルになった現代社会にこそ、必要な笑いでもあるのではないか。
●取材・文/細田成嗣(HEW)