借金には別のメリットもある。金融ジャーナリストの小泉深氏が語る。
「法人税は会社の利益に税率をかけて算出する。そのため、負債を多くして利益を減らすことで、税額を減らすことができます。むしろ借金をしていない企業はその分税金を多く払っている、つまり“株主の取り分を減らしている”とも言えるのです」
コロナ禍という“有事”においては、無借金にこだわる理由はなく、借金することが“起死回生の一手”になることもある。
「仮に高い技術力を持つ企業でも、コロナが収束するまで資金繰りを維持できなければ淘汰されていくでしょう。今は借り入れを増やして、手元資金を積み増すほうが賢いと言える。ANAの場合も賃金カットや不採算路線の見直しなどでコストカットをしながら、借金でどれだけ財務基盤を強化できるかがカギになるでしょう」(前出・福田氏)
“良い借金”になるか、“悪い借金”になるかは、借りてからの経営手腕にかかってくる。
※週刊ポスト2020年11月6・13日号