2010年の「111歳」事件は大きな衝撃を与えた
親の遺体を放置して年金を不正受給するのは極端なケースとしても、働き盛りの「子供世代」が生活に困り、親の年金を頼りに同居を求めたり、仕送りを無心したりする事例は少なからずあるようだ。社会保険労務士の中山大輔氏が指摘する。
「コロナ不況の出口が見えないなかでは、60代以上の人たちも“年金生活に入っているから自分は逃げ切り世代だ”と安心するのは早計でしょう。子供が勤務先を解雇されるなどして年金世代の親を頼らざるを得ないというケースは想定しておく必要がある。先日も、年金事務所で相談対応をしていたら、すでに年金受給している方から『30代の息子がリストラに遭ったので自分の扶養に入れたいが、どうすればいいか』という相談を受けました」
公的年金だけでは、高齢夫婦2人が生活していくのさえギリギリというケースは多い。それでも、子供が生活に困って頼ってくれば、「自分のことは自分でやれ」と突き放せるものではないだろう。昨年、定年後の夫婦が生活するには「公的年金のほかに約2000万円の金融資産が必要」とする金融庁の報告書が話題となったが、独立したはずの子供の面倒までみるとなれば、金融資産を持っている層も貧困に陥るかもしれない。
どこかの副総理兼財務大臣は、国民ひとり10万円のコロナ特別給付金が「貯金に回った」と文句を言っていたが、そもそも給付金は国民の生活を守るためのものであって、どんどん使って景気を盛り上げよう、という主旨ではなかったはずだ。迫りくる不況に備えて貯金して何が悪いというのか。国民の苦しい台所がまるで見えていない大臣が政府のナンバー2というのでは、コロナ不況の出口はまだまだ遠そうだ。