国内

敏感すぎる「HSP」増加 生きづらさの理由求め自称する例も

昨年末に夫婦で土地を共同購入していたという(時事通信フォト)

「HSP」だと名乗り出たベッキー(時事通信フォト)

「夫の実家の雰囲気が苦手です。お義母さんはズケズケものを言う人で、お義父さんに注意するのも怒鳴りつけるような口調になるんです。はたで聞いていると、なんだか私が責められているように感じて、いたたまれなくなります。そんななかで『HSP』を知って、“私、これだったのか!”と、ストンときました」(池本夏美さん・35才・仮名)

 いま、池本さんのような『HSP』と呼ばれる「繊細すぎる人」が増えている。HSPとは「ハイリー・センシティブ・パーソン」の略称で、日本ではこの1〜2年で急激に話題を集めるようになった。HSPを扱った書籍『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社)の売り上げは45万部を突破し、芸能界でもベッキー(36才)や要潤(39才)、ロンドンブーツ1号2号の田村淳(46才)などが「自分はHSP」と次々に名乗り出るなど、ちょっとした社会現象になっている。

 そもそもHSPとはどんな人を指すのか。精神科医でハタイクリニック院長の西脇俊二さんが解説する。

「外部からの刺激に敏感で、疲れやすい人のことを指します。他人の気持ちに共感しすぎるので、職場などで同僚が叱責されているのを見ると自分のことのように感じて傷ついたり、映画に感情移入しすぎて悲しみから抜け出せなかったりします。また大きな音や強い光などが苦手で、五感が鋭いという特徴もあります」

 こうした特徴は、脳の発達のアンバランスさによって生じる発達障害やADHD(注意欠如・多動性障害)にもみられるが、両者の違いは、HSPは“病気ではない”ということ。

「HSPは他人とコミュニケーションが取れているため、医学的に病気とは認知されていません。つまり、それはあくまで、一人ひとりが持って生まれた“気質”です。ただ、自己判断が難しく、HSPではないかと外来に来てASD(自閉スペクトラム症)と診断がつくケースもあります」(西脇さん)

 つまり、HSPは、「神経質」や「心配性」と同じような、性格のいち傾向だということ。それではなぜ、「繊細さん」だと主張する人だけが増えているのか。精神科医の片田珠美さんが言う。

「心理状態や性格傾向に名前がつけられると、『自分もそうではないか』と思う人が増える傾向にあります。特にHSPはメディアで取り上げられて認知度が上がったことで、急増しているフシがあります。5人に1人がその気質を持っているとされますが、自称している人の全員が本当にそんなに繊細なのか疑問です。

 ではなぜそう言いたがるのか。それは、現代の世の中を生きづらいと感じ、その理由をどこかに求めたいから。例えば会社や学校、家庭でうまくいかないとき、自分に能力や努力が足りないせいと考えれば、自己愛が傷ついてしまう。だから、それより、『自分が繊細すぎるからだ』と考えた方が納得しやすいのです」

 世代・トレンド評論家の牛窪恵さんは、コロナ禍も影響していると話す。

「2012年に『LINE』が爆発的に普及したことが、1つの大きな転換期になりました。HSPの人たちが敏感に感じる対象が、実際に会う人だけでなく、SNSやメールなどバーチャルな世界にも広がってしまった。その中で起きたコロナ禍により、人と会えないからこそ誰かとつながりたいという欲求が高まり、SNSの利用はますます加速。そこに書かれている誰かの一言に敏感になりやすくなったのです」

※女性セブン2020年11月26日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
フリー転身を発表した遠野なぎこ(本人instagramより)
《訃報》「生きづらさ感じる人に寄り添う」遠野なぎこさんが逝去、フリー転向で語っていた“病のリアルを伝えたい”真摯な思い
NEWSポストセブン
なぜ蓮舫氏は東京から再出馬しなかったのか
蓮舫氏の参院選「比例」出馬の背景に“女の戦い”か 東京選挙区・立民の塩村文夏氏は「お世話になっている。蓮舫さんに返ってきてほしい」
NEWSポストセブン
泉房穂氏(左)が「潜水艦作戦」をするのは立花孝志候補を避けるため?
参院選・泉房穂氏が異例の「潜水艦作戦」 NHK党・立花孝志氏の批判かわす狙い? 陣営スタッフは「違います」と回答「予定は事務所も完全に把握していない」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《真美子さんの艶やかな黒髪》レッドカーペット直前にヘアサロンで見せていた「モデルとしての表情」鏡を真剣に見つめて…【大谷翔平と手を繋いで登壇】
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《永瀬廉と浜辺美波のアツアツデート現場》「安く見積もっても5万円」「食べログ予約もできる」高級鉄板焼き屋で“丸ごと貸し切りディナー”
NEWSポストセブン
誕生日を迎えた大谷翔平と子連れ観戦する真美子夫人(写真左/AFLO、写真右/時事通信フォト)
《家族の応援が何よりのプレゼント》大谷翔平のバースデー登板を真美子夫人が子連れ観戦、試合後は即帰宅せず球場で家族水入らずの時間を満喫
女性セブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《永瀬廉と全身黒のリンクコーデデート》浜辺美波、プライベートで見せていた“ダル着私服のギャップ”「2万7500円のジャージ風ジャケット、足元はリカバリーサンダル」
NEWSポストセブン
6月13日、航空会社『エア・インディア』の旅客機が墜落し乗客1名を除いた241名が死亡した(時事通信フォト/Xより)
《エア・インディア墜落の原因は》「なぜスイッチをオフにした?」調査報告書で明かされた事故直前の“パイロットの会話”と機長が抱えていた“精神衛生上の問題”【260名が死亡】
NEWSポストセブン
亡くなった三浦春馬さんと「みたままつり」の提灯
《三浦春馬が今年も靖国に》『永遠の0』から続く縁…“春友”が灯す数多くの提灯と広がる思い「生きた証を風化させない」
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《タクシーで自宅マンションへ》永瀬廉と浜辺美波“ノーマスク”で見えた信頼感「追いかけたい」「知性を感じたい」…合致する恋愛観
NEWSポストセブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《産後とは思えない》真美子さん「背中がざっくり開いたドレスの着こなし」は努力の賜物…目撃されていた「白パーカー私服での外出姿」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン