ライフ

私は問題解決フェチ ジェーン・スーの“人生相談エッセイ”

これからの時代の理想の女性像は「ヒョウ」か「イルカ」タイプだという

悩める女性読者をうまく動物に例えるジェーン・スーさん(撮影/黒石あみ)

【著者に訊け】
ジェーン・スーさん/『女のお悩み動物園』/小学館/1500円

【本の内容】
〈どこに生息しようが、真面目に生きていれば、悩んで当然。自分のこと、家族のこと、友人、恋愛、仕事、将来。問題は、それが本当に「悩みごと」なのかってこと〉──自ら「問題解決フェチ」というスーさんが、悩んでいる人の特徴と傾向を16種類の動物になぞらえて、相談者に温かく寄り添う快刀乱麻の回答を示す。読後感は爽快。生きづらさの原因や社会の実相が鮮やかに浮かび上がる。

 フクロウさんにアヒルさん、ヒョウさんにカンガルーさん。悩める女性読者を、相談の傾向と特徴で動物園の動物になぞらえる。面白く読ませつつ、「なるほど!」というヒントのつまった一冊だ。

「『あるある』って仲間で言い合うの、楽しいじゃないですか。でもいま、『あるある』ネタはすごく炎上しやすいんです。ピリリと辛辣に書くと貶めることにもなりかねず、この本では、誰かを嘲ったり足を引っ張ったりしない『あるある』をやろうと思いました」

 30代向けの女性誌『Oggi』の連載がもとになっている。女の人の生態を動物にたとえるエッセイと、その後に始めた人生相談を合体させた。タイプの違う読みものが、うまく溶け合っている。

「30代の自分を思い出すと、視野が狭くて苦しかった。年をとるにつれ見える範囲が上下左右に広がり、他人の主観を取り入れることで自分の主観を手放すことができたりもするようになるけど、大真面目にそんなことを書いても誰も読んでくれないんで(笑い)、動物にたとえたわけです」

 相談者を否定せず、優しく受け止める姿勢にシスターフッド(女性同士の連帯)を感じる。

「人生相談って回答者を『神』にしてしまうシステムなんですよ。注意しないと傲慢になったり、自分の言いたいことだけ言ったりして危険です。そういう土俵にみずから上がってしまった以上、踏み外さないように気をつけましたね。4年前に亡くなった雨宮まみさんがネットでやってらした人生相談は、相手を否定せず本当に優しくて、私の構成要素にはない部分なので見習いたいと思いました」

 あなたの個人的な悩みは実は構造的な問題では?と違う見方を示し、具体的な解決方法も示す。

「人生相談をやってみて、私は解決案を見つけると興奮して楽しくなる、『問題解決フェチ』だとわかりました。それと、あえてきれいごとを言いたかったんですよね。『あなたのがんばりは誰かが見ている』とか『夢を持ったら形にしてみよう』とか。そして、それを実証するにはストリートの知恵が必要になる。私はそのサポートを、若い人が一生懸命走る沿道で旗を振る人になりたいですね」

取材・構成/佐久間文子

※女性セブン2020年12月10日号

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン