第69代横綱を務めた白鵬翔氏
幕内通算1093勝、幕内最高優勝45回の記録を持つ第69代横綱を務めた白鵬翔氏。引退後は宮城野部屋を継承し、弟子の育成に努めていた。それだけに5月場所後に相撲協会を退職したことは大きな衝撃をもって受け止められた。白鵬氏の退職後の相撲協会には大きな変化が見受けられる。相撲担当記者が振り返る。
「白鵬は現役中から弟子確保のルートを構築し、周到な準備をしてきた。ジュニアの青田買いのために白鵬杯を開催し、高校相撲の名門の鳥取城北高と太いパイプを作ってきた。同校総監督の出身校の日大にもパイプを持ち、日本に留学させるモンゴルルートも確保。そのルートを使って現役時代から内弟子というかたちで宮城野部屋に入門させていた。内弟子を付け人にしてアドバイスをして番付を上げさせていく。そうやって石浦、炎鵬、川副、北青鵬、聖白鵬などをスカウトし、内弟子としてきた」
そうした準備を重ね、2021年の引退後は宮城野部屋付きの間垣親方を経て、2022年に名跡交換して宮城野部屋を継承した。部屋持ちの親方になり、次に目指したのは一門の理事、そしてその先にある理事長の座だったという。前出・相撲担当記者が続ける。
「宮城野部屋が所属するのは伊勢ヶ濱一門で、元横綱・旭富士の伊勢ヶ濱親方の後任理事は、親方衆にも人気がある元大関・魁皇の浅香山親方が引き継いだ。白鵬はモンゴル出身の親方を集めて理事に出馬する動きを見せたり、伊勢ヶ濱一門での勢力を握ることを水面下で模索していた。貴乃花親方が二所ノ関一門を割って貴乃花一門を創設するなどして理事長への道を模索していたのと全く同じパターンだった」
とはいえ角界は年功序列。どんなに弟子を育てたところで理事になれるわけではないという。
「50代後半になれば理事の椅子も回ってくるが、貴乃花親方はそれでは遅いとして動いた。当時の北の湖理事長を後ろ盾にのし上がってきたが、北の湖理事長が急逝したことで流れが大きく変わった。弟子が現役横綱だった白鵬らに暴行を受けたことをきっかけに協会内で孤立し、最後は弟子の暴行事件をきっかけに2018年、退職の道を選んだ。
白鵬も、弟子である北青鵬(引退)の暴力事件をきっかけに宮城野部屋が2024年3月28日付で当面閉鎖となり、所属者全員が伊勢ヶ濱部屋に移籍となった。1~2年で宮城野部屋は再興されると見られていたが、1年以上経過しても動きがなかった。それどころか元横綱・旭富士の伊勢ヶ濱親方の定年に伴い、弟子の照ノ富士が部屋を継承する動きが出てきた。伊勢ヶ濱一門の統帥の継承により将来の理事の座が既成事実化しようとしていた。モンゴルの後輩横綱に先を越されるようなかたちとなり、白鵬は部屋の再開を待たずに協会を去ることになったわけです」(同前)
