ストレスを受け止める道を選んだ
「長いリハビリ期間は辛くなかったか。ストレスのコントロールはどうしていたのか」といった質問をよく受けます。お酒を飲んだり、美味しいものを食べたりして発散する方法もありますが、ただの気休めにしかならないと思っています。人それぞれの考え方があるので、刹那的でもパーッとやることで前に進むことができればそれでいいと思いますが、僕はあえて野球と向き合い、ストレスを受け止める道を選びました。野球で受けたストレスは野球で返すしか発散できないという考えでしたから。
自分に人より強い忍耐力があるというわけではありません。むしろ自分の弱さを知っているので、常にやるべきことを明確にしないと怖くなってしまうのです。襲ってくる怖さを知り、それでもやらなければならないとなれば、みんな思考を巡らせると思います。
思えばリハビリ期間はその繰り返しでしたね。他のことならいざ知らず、自分が好きな野球に対しては背を向けたくない思いが一番でした。自分が好きなことをやりたいのなら、どんな辛いケガをしても、最後の最後まで踏ん張り続けるべきだと思っています。
【プロフィール】
斉藤和巳(さいとう・かずみ)/1977年生まれ、京都府出身。1995年ドラフト1位でダイエーに入団。2006年投手5冠達成。現在は解説者として活躍中。
取材・文/松永多佳倫
※週刊ポスト2020年12月11日号