デジタル庁創設で提言する下村政調会長(時事通信フォト)

デジタル庁創設で提言する下村政調会長(時事通信フォト)

 菅政権の誕生後、永田町や霞が関では、政権中枢と外資系アナリストをつなぐキーマンの存在が囁かれている。それが国際金融ブローカーの和田誠一である。この和田が小西美術工藝社の会長に就いている。アトキンソンは2014年に会長と社長の兼務をやめたことは前述したが、その際に会長になったのが和田だった。

 和田は1990年代、消費者金融「武富士」の資金調達係として名を馳せた。その筋では知られた金融ブローカーである。元武富士の役員が説明する。

「サラ金が社会問題化して武富士が日本の銀行から融資を受けられなくなったときに頼ったのが、和田氏でした。香港に会社を持ち、東京のアークヒルズにあった会計事務所を行き来しながら武富士のために動いていた。香港に拠点を置いたのは節税のためだとも囁かれ、米バンカーストラストなどから3000億円を調達した。それが京都駅前の地上げ資金だったとも取り沙汰されました」

 この謎めいた怪人物は政界の知己も多い。かつて学習塾経営に乗り出したこともある和田は、文教族の下村博文(元文科大臣)とも30年来の交友がある。下村は新政権で菅が自民党政調会長に抜擢した、ともに1996年初当選の同期の桜だ。

 菅に加えて、和田と下村という複雑な人脈について、当のアトキンソンは、『週刊文春』10月15日号でこう答えている。

「私が社長になった後、和田さんを会長にした。政治家との繋がりのためです。(筆者注・文化財の)修繕に日本産漆を使うべきと提言するために(和田氏から)下村さんを紹介して頂きました」

 アトキンソンは政界のパイプ作りのために和田を会長に据えたという。だが、実は話は逆で、政界に通じる和田がアトキンソンを小西美術工藝社に入れたのではないか、という説も根強い。ある官邸関係者はこうも言った。

「和田さんはカジノ・IR業界にも通じており、菅さんの地元・横浜のドンと呼ばれる藤木企業の藤木幸夫会長(横浜港運協会前会長)とも交流があるとされる。菅さんの支援者でありながらこの数年、カジノ反対に回っている藤木会長とのあいだを取り持つべく、菅総理が和田さんに頼んでいるのではないでしょうか」

 菅はアトキンソンとの対談でも、日本の観光にはIRが欠かせないと言い続けている。その狙いもまた、コロナで目算が狂っている。

【プロフィール】
森功(もり・いさお)/ノンフィクション作家。1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2016年に『総理の影 菅義偉の正体』を上梓。他の著書に『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』『ならずもの 井上雅博伝 ヤフーを作った男』など。

※週刊ポスト2020年12月11日号

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