ロックバンド・エレファントカシマシのボーカル&ギターで、シンガーソングライターとしても活躍する宮本浩次(54)。個人名義で出した自身初のカバー・アルバム『ROMANCE』が大きな反響を巻き起こしている。「泣きそうになる」という感想さえ寄せられているのだが、なぜこの作品はそれほどまでにリスナーの心に響くのだろうか。
11月8日にリリースされた『ROMANCE』は、ちあきなおみ「喝采」(1972年)や中島みゆき「化粧」(1978年)、久保田早紀「異邦人」(1979年)、松田聖子「赤いスイートピー」(1982年)といった70〜80年代の歌謡曲に加えて、宇多田ヒカル「First Love」(1999年)までを取り上げたカバー集。全楽曲が女性歌手の作品であることが特徴となっており、アルバムには“宮本が愛した、おんな唄”というキャッチコピーが付されている。
11月24日発表の「オリコン週間アルバムランキング」では初登場にして首位を獲得。さらにリリース2週目となる12月7日付(集計期間:2020年11月23日〜11月29日)のBillboard JAPANダウンロード・アルバム・チャートでもトップの座を射止めており、今後もますます注目を集めていきそうだ。
宮本といえば、エレファントカシマシにおける無骨な姿がパブリックイメージとして定着しているのではないだろうか。すなわち無精髭を生やしたボサッとした髪型で「さあ、がんばろうぜ!」と力強くリスナーに語りかける音楽というイメージである。だが『ROMANCE』ではそうしたパブリックイメージとは一風変わった印象を放っている。
たとえば11月27日に放送された朝の情報番組『あさイチ』(NHK)にゲスト出演した際、宮本はアルバム収録曲「ロマンス」をはじめとした3曲を披露。それを聴いた番組MCでお笑い芸人の博多大吉は目を潤ませながら「気を抜くと泣きそうになる」と感動した様子を見せていた。
なぜ宮本浩次の“おんな唄”はリスナーの琴線に触れるのだろうか。音楽誌出身の編集者でライターの小松香里氏はその理由をこう解説する。