NHKのフロアディレクター出身芸人の失敗談
ただ、商品名や企業名込みでひとつの作品である楽曲とは別に、演者たちのトークなどに関しては、商品名を出すのは相変わらずのご法度のようだ。
元NHKの有働由美子・フリーアナウンサーは、7月10日に放送されたラジオ番組『うどうのらじお』(ニッポン放送)で、NHK時代の“商品名を出さない”話し方が染みついていると語った。近年はルールが緩和されたとしつつも、「『ギネスブック』は、『ビール会社が出している、世界一を集めた本』」など細かな言い換えについて明かしていた。
芸人になる前はNHKのフロアディレクターとして働いていたお笑いコンビ・フランスピアノの山本陽平はこう証言する。
「どーも! 芸人で唯一、生放送のニュース速報に対応できます! フランスピアノの山本陽平です。僕は芸人になる前、NHKでフロアディレクターとして働いていました。基本的には報道番組を担当し、商品名が書かれていないか原稿の確認をしたり、キャスターや出演者のペットボトルの水のラベルを剥がしたりして、商品名がテレビに映らないように準備をすることが仕事のひとつでしたね。
ニュースを世間に発信するわけですから、商品名の取り扱いに関しては特に気を使っていましたが、一度失敗してしまったことがあったんです。生放送の報道番組で、ゲストに大学の教授やジャーナリストを迎えて、国際問題について討論するという回がありました。事前にゲストの方々にはテーマなどをフリップに書いていただいていたのですが、VTRに入ったときに、書き足したいことがあるという方がいて、僕がカンペに使う用の『PROCKEY』のペンをお貸ししました。その方がフリップに書き足しているときにVTRが終了し、スタジオに切り替わってしまったのです。
放送自体は実際に確認ができなかったのですが、おそらくテレビには『PROCKEY』という商品名が映ってしまっていたと思います。ペンは基本的にテープで巻き、商品名を見えないようにしなければならないのですが、僕は自分のペンにまでその配慮をしていませんでした。多くの人が時間をかけて一つの番組を作る現場で、そういった一瞬のミスが自分自身や会社に迷惑をかけてしまうのだと、とても反省をしたことは今でも覚えています……」
山本は今年27歳になったばかり。上記の失敗談はあくまで近年の出来事だが、NHKスタッフは今もそこまで注意を払わないといけないものなのかと驚かされる。また10年後、20年後にはルールがさらに緩和されているのか、それとも……?
◆取材・文/原田イチボ(HEW)