決戦の日取りがまさかの(写真/共同通信社)

決戦の日取りがまさかの「一」「二」「一」「三」(写真/共同通信社)

 昨年、東京世界選手権を2週間後に控えた夏の日、丸山の妻の親族から仲介の申し入れがあり、丸山と顕志氏は3年ぶりに対面した。丸山は連絡を絶っていたことを詫び、「必ず世界一になります」と誓ったという。スーツを着た丸山は上着を脱がず汗だくのまま正座を続けていたが、その目は輝き、「良い顔をしているな」が顕志氏の正直な感想だった。

 世界選手権の会場である日本武道館まで丸山の祖母や妹も連れて応援に行くことを決め、応援グッズも自作した。試合の前夜から誰もいない日本武道館のチケット売り場に並び、雨の中チケットが発売され、購入するや一目散に席に向かった。

 丸山はそこで世界王者となるも、顕志氏は「そこからまた連絡が途絶えてしまって……」と明かす。

 続く昨年11月のグランドスラム大阪で、丸山は阿部に勝利すれば、66キロ級の代表に内定することが決まっていた。だが、決勝で阿部に敗れ、さらに丸山が欠場した今年2月のグランドスラム・デュッセルドルフを阿部が制したことで、代表レースは横並びとなった。

「確かに世界一にはなりましたが、天狗になり、世界一病になっているのではないか。彼の勝利を願って、88歳になるおばあちゃんは毎日、祈っているんです。そのおばあちゃんに対するお礼の連絡もせず、祝勝会にも呼ばず、本人はのんきに嫁と一緒にYouTubeに出たりしている。アスリートである前に、人として大事な物を見失っているのではないか」

ワンマッチで勝てるのか

 代表が決まる予定だった4月5日を前に、いても立ってもいられなくなった顕志氏は丸山が練習拠点とする天理大に向かった。そこで顕志氏は同大で練習する大学生も唖然とする行動に出る。丸山と会うなり、「何を考えているんだ! どういうつもりで生きてきたのか!!」と問い詰め、息子に対して平手打ち……。

「今の時代に許されない親子の関係ですし、反省もします。天理大の関係者にも、もっと落ち着いて行動してくださいとなだめられました。でも、今の状態のままではとても阿部君に勝てるとは思えなかった……」

 正直なところ、顕志氏の本心が、突飛な言動のあまり見えなくなる。だが、心の奥底では息子の五輪出場、そして金メダルを誰より強く信じているのではないか。

 今年に入ってから私は、顕志氏が拠点とする福岡の自宅兼道場を二度、訪ねた。道場へ続くコンクリートの階段には五輪マークが刻印され、道場内にも壁や天井にこれでもかというぐらいに五輪マークが描かれている。丸山が拠点とする天理から遠く離れた福岡で、息子の出場を願っているからこそだろう。一方で、このままでは阿部に負けてしまうかもしれない――その危機感が、息子に対する強烈な言動につながっているのだ。

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