路上で待機するフードデリバリーの配達員(時事通信フォト)
複数アカウント、略して「複アカ」とは、一人で複数のアカウントを使い分けることを指すが、SNSやソーシャルゲームなどの多くで禁じられ、推奨されない行為とされている。もちろん、商行為を伴うウーバーイーツでも同一人物が複アカを持ったり、他人のアカウントを使用したりすることは禁じられている。
島野さんは「ベトナム人」と名指ししたが、もちろん他の外国人配達員もいる。なぜベトナム人が目立つのかといえば、在留外国人としてのベトナム人がこの数年で激増しているからだ。2010年末には4万1354人だったのが、今年の6月末現在で42万415人にのぼっている。構成比では中国の次に多い韓国を抜きそうな勢いだ。そして、ベトナム国籍の在留者に特徴的なのは、約42万人のうちの21万9501人が技能実習生という実態だ。もちろん、外国人技能実習生のなかで最も大きな勢力でもある。そのため、コロナ禍で本国に帰れず日本に取り残された留学生や技能実習生による事件が起きたとき、どうしてもベトナム国籍の者が目につく。ウーバー関連でも今年の10月、神戸でベトナム国籍の男女が不法残留のままウーバーイーツの仕事中に逮捕された。まさに地蔵中の逮捕で、「ウーバーイーツの人たちが路地でたむろしている」という通報による職質がきっかけだった。筆者が目撃した池袋のウーバー地蔵に対する一斉職質も不法残留者の洗い出しだった。
「もし歩いててそんなのに当てられたらたまりませんよね、賠償なんか1円も出ませんよ」
面接も研修もない。本人確認は写真と身分証アップロードだけ、だったが……
ウーバーイーツは従来から対物・対人賠償責任保険は適用されるため、一般市民が配達中のパートナーに万が一ぶつけられたり轢かれたりした場合、その被害者は原則1億円まで補償される。リクエストを受けて配達を終了するまで以外の補償はフリーランスワーカーの福利厚生サポートやキャリア支援などを手掛ける「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」に賛助会員として加盟しているため、配達員はベネフィットプランを利用することができる。このベネフィットプランには、注文を受けるまでの待機時間や、稼働外である日常生活の万一の事故などをサポートする傷害補償なども含まれ、配達パートナー向け傷害補償制度に加えて補償を受けることが可能となるが、あくまで審査するのは損害保険会社なのでなんとも言えない。サポートはあるが原則自己責任の個人事業主、雇用関係がないということはそういうことだ。なりすましの配達員の瑕疵が補償されるのか―― そもそもコミュニティガイドラインの禁止事項なわけで、今回捕まった、生きていくのもやっとどころか不法滞在中のベトナム人にぶつけられでもしたら、障害を負っても死んでも泣き寝入りになる可能性が高い。
もちろん、島野さんがリクエストを待つ間に「軽く走る」行為も。
「それはずっと不安でした。個人の自転車保険は入ってますけど、さすがに事業用の保険なんか入るのはバカバカしいですし……」